あなたの残業、本当に必要ですか?:働き方の習慣を変えよう(2/4 ページ)
かつてメーカーに勤務していた筆者は、残業と休日出勤が定常化していた。疲労感を抱えながら仕事をすると、集中力は低下し、生産性は落ちていく。その結果、さらなる長時間残業に発展していくという悪循環だった。全ての原因は「働き方の悪い習慣」の積み重ねだったという……。
高密度仕事術で「人生が変わった!!」Sさんの実例
仕事の密度を高めると、なぜ人生が好転するのか?
仕事の密度を高めることは、単なる時短ではありません。捻出した時間を、より価値のある仕事に投入したり自己投資に向けると、成果は高まり続けます。さらに仕事面だけではなく、健康のための運動、家族との時間や自分のための時間が生まれて、人生が好転していきます。ここでは、実例を基にその好循環のスパイラルをご紹介します。
まず冒頭に「高密度仕事術」を実践した人の実例をご紹介します。仕事の密度を高めていくことが仕事のみならず生活や人生にどのように「いい影響」を与えていくかを感じていただければと思います。
Sさんは、42歳のシステムエンジニアです。月の残業時間は平均で60時間。土日のいずれかは休日出社を繰り返していました。
1日のリズムは次の通りです。
出社は、朝9時ギリギリで、会社に着くやいなや緊急の仕事に追われてバタバタ。終電帰りも当たり前で、家と会社の往復だけの日々がほとんど。平日に子どもと一緒に遊べることは皆無です。現実の仕事から逃げていたいという気持ちから、朝はずっと布団の中にいて、出勤時間ギリギリまで起きることができません。
土日も出勤して残務を処理するので仕事の不安が抜けません。こうなると、休んでいるときもリラックスできず、疲れがとれない状態です。
また、ここ10年間、平日は朝ごはんをほとんど食べたことがありませんでした。三食摂る習慣がなく、昼にドカ食いし、夜も仕事終わりの深夜に食事するために、体重は入社時より30kgも増えてしまいました。健康診断の結果、肝機能とコレステロール、中性脂肪が高く、医師からも「このままでは早死にしますよ」と忠告される始末です。
Sさんは、いつも何かに追われている生活から脱したいという思いから「高密度仕事術」に取り組みました。結果、3カ月間で、残業を月30時間まで減らすことができました。残業時間が半分に減りましたが、本人曰く「一番の成果は休日出勤をゼロにできたこと」。休日は仕事のことを考えなくてすむ分、家族との時間を純粋に楽しめるようになり、ストレスが大幅に軽減したと言います。
顕著な変化は、残業時間が恒常的に減ったことです。
下のグラフは2015年12月までしか載せていませんが、それ以降もアップダウンはあるものの、継続的に残業時間の総量が減っています。
さらに、平日にも自由な時間が生まれたため、朝、布団から出たくないという気持ちが和らぎ、6時半には起床できるように。ゆっくり食事を摂る時間も持てるようになりました。
好循環は進み、精神的な余裕ができたため、ダイエットに取り組みました。朝ごはんを食べる健康的な習慣を身に付け、なんと7カ月で20kg痩せたのです。
さらに興味深いのは、仕事に追われる毎日から解放され自分と向き合う時間が取れるようになったこと。自分のやりたいこと、これからの人生を考える機会が増えました。そんなとき、ある会社から「うちの会社に来てくれないか」と誘われます。将来の働きがいを考えた末に自分の強みをもっと生かせるプログラム開発ができるこの会社への転職を決意します。
今、Sさんは新しい会社に入り、業界随一のプログラマーと一緒に仕事ができる最高の環境を手に入れました。レベルが高い人と働くのは、仕事に追われていたときとは全く別のプレッシャーがあるものの、自分を高める環境がSさんをイキイキと輝かせています。
Sさんに起きた好循環のスパイラルは、働き方の習慣を良くすることで生まれものです。
この例は、職種や仕事の立場によって特殊に見えるかもしれません。しかし仕事の密度を高めた効果は、短期的な残業削減だけでなく生活、健康、精神、人生に良い影響が広がることにあります。
では、高密度化がもたらす効果を整理して次に紹介します。
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