フェイクニュース対策は「言論統制」に利用されてしまうのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
FacebookなどのSNSを悪用したフェイクニュース対策として、国内の言論統制を強化しようとする国が出てきている。法規制が強まると、言論弾圧につながる可能性もある。表現の自由を保障しながらフェイクニュース拡散を防ぐには、どうしたらいいのか。
各国で強まるフェイクニュースへの法規制
シンガポールの隣国、マレーシアでは最近、首相退任後に汚職で起訴されたナジブ・ラザク前首相が、在職中に自らに有利になるようにフェイクニュースの規制を強化。表現の自由をないがしろにしているとして、ナジブのライバルであり、後任として5月に就任したマハティール・モハマド首相が、その規制を廃止すべく動いた。だが前首相寄りの野党が支配する議会によって、阻止されてしまっている。
カンボジアでも、5月に法規制が始まっている。フェイクニュース拡散に1000ドルの罰金または2年の禁錮刑が課され、既存メディアにも規制の範囲が及んでいるとの指摘も出ている。エジプトでも、5000人以上のフォロワーがいるSNSはメディアと認識され、フェイクニュースを起訴対象とする法規制が7月に議会で可決されている。
また東欧のベラルーシや、東アフリカのケニアでもすでに法規制が存在する。ベラルーシはオンライン上でフェイクニュースなどをポストすれば起訴の対象になるし、SNS自体がブロックされる可能性もある。ケニアでも、意図的にフェイクニュースをアップすれば、5万ドルほどの罰金または最大2年の禁錮刑になる。
これらの国では、これまで以上に国民の言論弾圧が強まると見られている。
さらに、何らかの形で規制を強化する方向に進んでいる国も少なくない。ブラジルも犯罪化に向けていくつもの法案が出されているし、フランスでも選挙に特化したフェイクニュースへの法規制強化案が可決している。ロシア、インド、台湾、インドネシア、韓国などでも、法案などが議論されている。
こうした規制は、国によって乱用され、表現活動を萎縮させてしまう可能性がある。
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