減り続ける「管理職のイス」と“死亡率”急上昇のリアル:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
「管理職になりたくない」人が6割を占める調査結果が問題になっているが、管理職の椅子が減っている現状を考えれば、希望者は4割で十分。それよりも、管理職の在り方そのものを見つめ直す必要がある。
「無能な人が昇進する」法則
……最後に、「ディルバートの法則」を紹介しておきましょう。これは、米国の大人気漫画『ディルバート(Dilbert)』の作者であるスコット・アダムズの造語で、「企業は損失を最小限にするために、最も無能な従業員を管理職に昇進させる傾向がある」というのが、その内容です。
米IT企業でエンジニアとして働いた経験を持つアダムズは1995年に米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿した記事でこの法則を紹介。「組織の生産性に直接的に関係しているのは組織の下層部で働く人たちであり、上層部にいる人たちは生産性にほとんど寄与していない。その結果、無能な人ほど、生産性とは関連の薄い上層部に昇進させられることがある」。こう皮肉ったのです。
ディルバートの法則は学術的な根拠が希薄だと研究者たちから批判されましたが、世間に広く支持されました。確かに仕事ができるからという理由で出世しているとは限らない現実を考えると、かなり納得のいく法則ですね。
ん? ってことは、管理職の賃金の方が高いこと自体がおかしくない?
さて、と。たかが管理職、されど管理職。あなたはどうしますか? 管理職を目指しますか? やっぱりやめますか?
私なら……、答えはまたの機会にいたしましょ。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
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