社長がフルコミットする必要はない――ポストミレニアル世代の経営戦略:長期的に考える(3/4 ページ)
働き方が多様化する中で、「ポストミレニアル世代」と呼ばれる若者は、「働く」ということをどう捉えているのか。17歳の時にYokiを起業した東出風馬さんに話を聞き、その仕事観を探った。
WORK MILL: 今はどんな体制で会社を経営しているのですか。
東出: チームとしては10人くらいなんですけど、基本的には皆リモートで、何かしら掛け持ちしている人が多いです。学生が中心ですが、高校生から40歳まで。エンジニアが数人とディレクターが2人、マーケティングと広報を兼務しているメンバーが1人、という感じです。海外にいるメンバーもいます。できれば一人も雇わずに、全員業務委託で、権限委譲して進めていきたいと考えています。ただ正規雇用でないとローンが組めなかったり世間体との差がありますので業務委託というのは実質という形ですね。
WORK MILL: 確かに、社員を雇うとなると、それだけ給与や諸経費も発生しますから、大変ですよね。
東出: どちらかというと、そういうネガティブな理由というより、皆それぞれがプロジェクトを掛け持ちしていくやり方のほうが正しいと思っているんです。経営者の立場にいると、「あなたの生活を保障します」なんて、絶対言えないな、と思っていて。僕自身もプロジェクトを掛け持ちして、そこからYokiにつながるノウハウを得ているから、皆さんもそうしてください、という感じなんです。
WORK MILL: よくスタートアップの経営者の方が、「創業期は寝食を惜しんで働いた」みたいに振り返っていたりしますけど、それとは真逆のアプローチですよね。「代表が会社にフルコミットしていない」というのは、とても新鮮です。
東出: 日本のスタートアップでは、短期勝負というか、ガーッとコミットして、1、2年で成果を出して、みたいなものが多いかもしれないけど、僕らは違いますから。長期的に続けていかなくてはならないので、それとは違うやり方をしなきゃいけないと思っています。一人一人の時間を使って、会社を成り立たせています。だから、メンバーを採用するときにも、2時間くらいかけてビジョンやミッションを共有するんです。
WORK MILL: 先ほど「業務委託で権限委譲する」とおっしゃってましたけど、自律的に動けるくらいプロフェッショナルな知識が必要ですよね。どうやってメンバーを見つけているのですか。
東出: 一人は大学の友人で、入学してから参加してもらったんですけど、それ以外はSNSが中心ですね。最初はFacebookのグループでリクルーティングをかけていたのですが、「ここは作業ページじゃない」って怒られたので、今はTwitterで地道にハッシュタグを追って探しています。エンジニアの場合、わりと自分のスキルをハッシュタグで書いてくれている人がいるんですよ。そういう人をフォローして、フォローバックされたらDM(ダイレクトメッセージ)して……という感じです。それと、最近はメンバーの紹介で入ってくれる人もいます。
WORK MILL: Twitterで見つかるものなんですね……。ハッシュタグでスキルを書いていたとしても、本当かな? と思ってしまいます。
東出: そこは今のところ、あまりウソはないですね。あとは、その人に合った役割に配置すれば、力を発揮できると思っています。
WORK MILL: きちんとメンバーのことを理解していなければ、適材適所に配置するのは難しいですよね。
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