採用してもすぐ辞める…… バイトを定着させる3つのポイント:負のスパイラルから脱却(2/3 ページ)
アルバイト・パートをうまく採用したとしても、次から次へと辞めてしまったのでは、根本的な問題解決にはならない。採用した人材に長く働き続けてもらうために、どのような工夫が必要なのだろうか?
(2)スキルアップの仕組みと評価制度の見直し
アルバイト・パート向けには評価制度を充実させている企業はまだ多くありません。しかし、アルバイト・パートの方も、一人一人のスキルや姿勢が適正に評価される環境であれば、その店舗で長く働き、成長したいという思いが芽生えてきます。ある流通系の企業では、オペレーションスキルの高い人材を海外研修へ招待したり、社内コンテストの出場を促したりするなど、上へ上へとランクアップを目指せる仕組み、働く興味とモチベーションを維持できる現場の仕組みを構築しています。
一方で、「定着の鍵はベテランスタッフにあり! ベテランマネジメントの要点」の記事にもあるように、勤続年数が長いベテランスタッフとの人間関係が原因で、他のアルバイト・パートが辞めてしまうケースは尽きません。
こうした課題に対して、評価の見直しという視点からメスを入れている企業事例もあります。ある飲食系の企業では、リーダーの評価条件を「できる人材」ではなく、「教えることができる人材」に変更したといいます。通常、ベテランスタッフを評価する対象は、オペレーションスキルのみとなっているケースがほとんどですが、新人の面倒を見ることができること、丁寧に教育できることも評価の対象に加えたのです。現場における役割を明確にし、制度に落とし込み、さらに「教えられる人材」を適正に評価できるリーダーたちを育成していく。そういったサイクルが回るようになると定着を促す上で理想的と言えます。
(3)多様な働き手のニーズに合わせた制度の整備
高校生、大学生、主婦、シニア、外国人と、働く側の多様化はますます進んでいます。それぞれの特性とニーズを理解し、そのニーズに応えられる職場でなければ、人材の定着は望めないでしょう。
例えば、時間帯によって、働くスタッフの属性を変えている飲食店もあります。午前中の仕込みは主婦やシニアの方、昼間・夜間の営業時間は大学生や外国人の方といった具合に、ぞれぞれの人材が働きやすい時間帯に働けるようシフトの組み方を工夫することで定着を図っているのです。
また、この飲食店では、結婚・出産を経て、職場復帰を目指す女性に向けて「準社員制度」を設けています。準社員という雇用形態で働きながら、必要に応じて、正社員を目指すことも、アルバイト・パートに戻ることもできる制度です。一人一人が、自分自身のライフスタイルに合わせて、働き方が選べるのも現場の定着促進に役立ちます。今後は、こうした個人のニーズに応える制度がより一層求められていきます。
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