あなたの知らない富裕層の世界:お金持ちの思考法を知る(2/2 ページ)
日本に100万人以上いるという富裕層は、どんなことを考え、どんな生活をしているのか。外資系金融機関で長年プライベートバンキング業務を務め、多くの富裕層を知る、ファイナンシャルアカデミーの渋谷豊氏の話を聞いた。
なぜタクシーに乗る?
考え方で普通の人と大きく違うのはどんなところだろうか? ミスしたり悪い出来事が起こると、誰かのせいにしたり経済環境の理由にするのが普通の人だとしたら、すべては自分の責任だと考え、他人のせいにしないというのが特徴だと渋谷氏は言う。
「(富裕層の人たちは)たいてい株主なんですね。自分の会社を持っています。何か問題が起こって人のせいにしても、結局自分の会社の価値は下がるんです。そうした体験から、人のせいにしても意味がないと知ったからなんです。『お前のせいじゃないか』といっても仕方ない。それで株価が上がるならいいけど、上がりませんから」
タクシーに乗ったり運転手付きの車に乗るのも、すべては自分の責任だという考えからだ。
「富裕層がなぜ運転手をつけるか。電車の中での冤罪(えんざい)などの話を最近聞きますよね。自分が選んで電車に乗ったことで社会的地位を失う可能性を考えると、何かが起こったときに文句が言えない環境を排除するために、自分がコントロールできる環境に身を置くんです」
自分がコントロールできるかどうか。それが富裕層の考え方の特徴かもしれない。だから、何100億円の資産を持っている方でも、人生の不安はなくならないようだと渋谷氏は言う。
「富裕層は、不安を味方にする方法を持っていて、解決する方法も知っています。自分でコントロールできない不安は不安じゃないんです。自分でコントロールできることに不安があるんです。地震が来るかもと不安に思ってもコントロールできません。そういうことを富裕層は不安に思いません。一方で、自分でコントロールできる不安には関心があります。例えば健康とか」
すべてが自分の責任だと考えるがゆえに、コントロール可能なことはできるだけコントロールし、逆に天変地異のようにコントロール不能なことはくよくよと思い悩まずさっぱりしている。そんな傾向があるようだ。
お金にこだわらないのがお金持ち
こうした富裕層たちは「結果的にお金にキレイ」だと渋谷氏。
「お金より信用を大事にしているからです。例えば支払いを割り勘にしたときに、ちょっとごまかしただけで信用を失うじゃないですか。『損して得取れ』という言葉がありますが、『損して徳取れ』がもともとでした。損してもいつかは得する、という意味ではなく、損しても一生懸命やれば人々が認めてくれて、よい仕事が回ってくるというニュアンスです。富裕層の方は意外と損を選びます。『お前これ損してもやったほうがいいよ』とよく言います」
もちろん、富裕層が損することにこだわらないのは、資産がしっかりとお金を生み出してくれるからで、普段の生活に困っていないせいでもある。しかし、もし富裕層を目指すなら、品の悪いいわゆる金持ちではなく、人間の格を上げたいものだ。
ファイナンシャルアカデミーでは、お金を持っているかどうかとは別に、お金に対する態度を変えていくことで「お金の教養STAGE」がアップすると説いている。現在富裕層でなくても、富裕層の人たちが持っているお金に対する考え方や行動を身につけることで、人としての品格が増すとともに、富裕層に近づけるという考え方だ。
「こいつお金の使い方ちょっとどうかな? と思う人は一生最高STAGEにはなれません」
富裕層の中でも立派な人の行いを真似ることで、少しでも富裕層に近づきたいものだ。
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