元大手民放エースアナ 甲子園を捨てeスポーツ実況に懸けた理由:初の専門アナウンサー事務所設立(2/2 ページ)
大手民放のアナウンサーが「自分抜きで盛り上がるのは許せない」と初のeスポーツ実況専門の事務所を設立。今後は後進育成や「選手の生き様を語る」実況を目指す。
「先行者優位があるうちに挑戦」
子どもの頃からのゲーム好き。局アナ時代にもゲーム実況の仕事をこなす中で「テレビ業界は待遇はいいが斜陽産業で大きな成長は見込めない。一方でeスポーツは一過性のブームで終わるかもしれないが大きな可能性がある」と思うようになった。
平岩さんによると現在eスポーツの実況担当者の多くはプロゲーマー出身者や、ゲーム実況動画を配信してきたユーチューバーだという。「ゲームには詳しくてもしゃべりのプロではない。(ゲームも詳しいアナウンサーの)自分にこそビジネスのチャンスがある。先行者優位があるうちに挑戦したい」と考えた。
「eスポーツが自分抜きで盛り上がるのは許せない」と鼻息荒く7年間在籍した朝日放送テレビを18年春に退社、6月には今の事務所を設立して本格的に活動を開始した。今後は事務所に所属するアナウンサーを増やしつつ、ゆくゆくはeスポーツ実況を志す人向けのスクールも立ち上げたいと語る。既に局アナ時代に、アナウンサー指導のためのノウハウをまとめてあるという。
ただ、プロ実況者はイメージほど簡単な仕事ではない。ゲーム大会は7時間続くこともざら。一般的なスポーツ実況が長い野球でも5時間程度であることを考えると、体力勝負の面も持つ。
専門知識の習得や解説との連携も重要になってくる。格闘やスポーツ系ゲームは一般的なスポーツ実況と比較的親和性が高いが、シャドウバースのようなカードゲームはむしろ将棋や囲碁に近くゲームシステムへの深い理解が求められる。「試合の5ターン目に話していた内容が10ターン目につながったり、一見ミスに見える手を解説がうまく説明することもある。実況は解説のそういった話をうまくかみ砕いてしゃべる必要がある」(平岩さん)。
選手の生き様を実況に載せる
実況としての目標は「最終的に声を枯らして応援したくなる」ほど観客を熱狂させることだ。「日本の観客はeスポーツ大会でもシャイで奥ゆかしい。うまく乗ってもらうには選手の頑張りや人柄の見える実況が必要だ」(平岩さん)。
「不登校だったがこのゲームに出会い変わった〇〇選手が今戦う」「東大生だったのに就職せずゲームにすべてを懸けた××選手が勝った!」。選手の持つ生き様、物語を実況に載せて放つ。普通のスポーツ実況にあってもeスポーツではまだあまりない、そんな熱い“語り”に挑戦していく。
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