58羽のペンギンの名前を瞬時に呼ぶ、水族館飼育員ワザの秘密:すみだ水族館に潜入(2/6 ページ)
すみだ水族館のペンギンがいるプールでは、1日3回、飼育スタッフたちの元気な声が響く。餌やりの時間だ。58羽いるペンギンの名前を声に出し、連携して動くスタッフたちに、思わず目を奪われる。どのようにあの技を身に付けているのだろうか。
58通りの「食べ方」を頭にたたき込む
入社して最初に取り組んだのは、「ペンギンの名前を呼べるようになること」。58羽のペンギンたちは、左右、あるいは片方のフリッパー(翼)に、さまざまな色のバンドを付けている。まずはその色の組み合わせを覚えて、それぞれの名前と一致させるのだ。見慣れてくると、顔や腹の模様、背の高さ、いつもいる場所などで見分けることができるようになるという。
新入社員は、先輩社員によるテストに合格すれば次のステップに進む。最初のテストでは、さまざまな角度からペンギンを見て、「この子は誰?」という問いに答える。ペンギンの近くからだけではなく、プールの上にある通路から見下ろしたり、水中で泳ぐ姿を探したりしながら、名前を覚えていく。福谷さんは2週間で合格した。入社前にアルバイト経験があったこともあり、比較的すんなりとクリアできた。
しかし、難しいのはここからだった。次のステップでは、それぞれのペンギンの「餌の食べ方」を覚えていく。食べやすい餌のあげ方は1羽ずつ異なる。
ペットなどの動物に餌をあげたことがある人も多いだろう。しかし、「あげ方」をそこまで意識することはなかったかもしれない。58羽いれば58通りの食べ方がある。ペンギンだけでなく、4頭いるオットセイも食べ方はそれぞれ。飼育スタッフはそれを覚えておく必要があるのだ。
例えば、魚を頭から飲み込むように食べる子もいれば、腹から横向きにくわえる子もいる。手渡しではなく、投げないと食べない子もいる。アジとイワシの好き嫌いもある。間違えてしまうと、餌を口から放してしまったり、他のペンギンに取られてしまったりして、食べることができない。
それを覚えるために、全てのペンギンの食べ方や特徴を紙に書き取っていく。その作業を毎日続けた。そうすることで、頭にたたき込んでいった。
名前と特徴を覚えたら、いよいよ餌やりの現場で練習することになる。餌やりでこなさなくてはならない役割は3つ。岩場に降りてペンギンたちに餌をあげる業務、岩場の上で全体を見ながら、誰が何をどれだけ食べたか紙にチェックする業務、水槽の外から客と同じ目線で全体の動きを見て、指示を出す業務だ。
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