ICOに代わる資金調達手段「ILP」とは何か?:blockhive創業者に聞く(6/6 ページ)
2017年から大ブームとなっている、仮想通貨を使った資金調達手段ICO。一方で、規制が追いついていない面もあり、詐欺なども横行している。法律が未整備なICOに代わり、資金の貸し付けをブロックチェーンを使って電子的に行うとどうなるのか? これを実現したエストニアの企業、blockhiveの創業者に話を聞いた。
日下氏は、今後ILPの仕組みを利用して、不動産への融資が革新されていく可能性もあると話す。「例えば、不動産を買うのに、証券化してローンで調達することもできるようになる」。不動産の購入は、現在銀行からの融資を使うのが一般的だが、もしILPの仕組みを使えば、個人がILPで融資してくれる人を募って不動産を購入し、契約相手のトークン保持者に返済をしていくという仕組みさえ可能になるかもしれない。
ブロックチェーン技術を活用した資金調達手段は、まだ始まったばかりで、規制面も含めて不透明な状況だ。「日本では残念ながら、仮想通貨交換業に最初にピントを合わせて規制が進んできたので、ブロックチェーンとトークンが絡むとそこに当てはめて考えなくてはいけない。ありとあらゆるものが仮想通貨の1号か2号に分類されてしまう。仮想通貨のレギュレーションを真っ先に作ったのが日本。しかしそのせいで、仮想通貨取引所におけるレギュレーションとICOにおけるレギュレーション、トークンが絡むブロックチェーンアプリケーションのレギュレーションが、悲しいかな一緒くたになっていて、スタートアップがイノベーティブなことをやる足かせになっている」(日下氏)
実際、blockhiveのILPでは、日本のユーザーから資金を調達することは断念している。blockhive自体はエストニア法人なので、借り入れはエストニア法に基づくが、貸し手側が日本人だと日本の貸金業法の対象となる可能性があるからだ。「日本の貸金業法は借り手保護の法律だが、弁護士から、母親が息子に貸すのも反復継続性の意思が少しでもあれば貸金業法の対象となる可能性があるといわれている。ILPを日本で推進すると、(資金の貸し手という)不法な貸金業者を増やす可能性があると見られる可能性があるので、その点は注意している」(日下氏)
投資家保護のためには、詐欺的な資金調達を防ぐ規制がたいへん重要だ。一方で、伝統的な資金調達方法を前提とした規制は、ともすればブロックチェーン技術を使った進歩を阻害し、イノベーションの種を国外に流出させることにもなりかねない。「規制があるからイノベーションが加速すると考えている」と日下氏が話すとおり、技術が急速に変化するなか、適切な規制のあり方が問われる時代になってきている。
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