幻の鉄道路線「未成線」に秘められた、観光開発の“伸びしろ”:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
建設途中で放棄され、完成に至らなかった「未成線」。現在でもその残骸は各地に残っている。未成線の活用を語り合う「全国未成線サミット」が福岡県で開催された。未成線に秘められた、観光開発の「伸びしろ」とは?
未成線は全国80カ所以上
「全国未成線サミット」には、未成線を活用しようとする団体が集まる。互いに現状を報告し、未成線の活用による地方創生について語り合い、親睦を深めようという催しである。
第1回は2017年3月に奈良県五條市で国土交通省共催の「2017国土政策フォーラムin五條『全国未成線サミット(未成線の利活用による地方創生)』」として開催された。参加団体は佐久間線(静岡県)の浜松市天竜区役所、今福線(島根県)の島根県技術士会、岩日北線(山口県)の綿川鉄道、油須原線(福岡県)の赤村トロッコの会、高千穂線(宮崎県)の高千穂あまてらす鉄道、五新線(奈良県)のNPO法人五新線再生推進会議だった。
第2回は赤村トロッコの会が受け持ち、福岡県赤村で開催された。参加団体は7団体で、新たに北九州銀行レトロラインが加わった。サミットの議事は赤村の住民センターの大ホールで行われた。代表者と来賓者のあいさつがあり、特別講演の鉄旅タレント木村裕子氏によるにぎやかなプレゼンテーションが笑いを誘った。日本全国で未成線は80カ所以上もあるそうだ。作りかけで放棄とは、ハコモノ行政の無駄遣いと糾弾されても仕方がない。当時も「建設中止」や「営業しない」と決まった時点で、同様の批判は存在した。
しかし、前向きに考えれば、活用すべき未成線は数多く存在するともいえる。例えば、今回の開催地、福岡県赤村の「赤村トロッコ油須原線」は、筑豊炭田の石炭輸送を目的に計画された油須原線のうち、赤村内の区間を観光活用している。1995年に、未使用の線路を使って軌道自転車を走らせるイベントを実施。好評だったことから、炭鉱トロッコ路線を整備した。トロッコ列車は約1.7キロを20〜25分で往復する。田園風景とコウモリが住むトンネルを走るというアドベンチャー体験が人気である。2003年から冬期を除く月1回の運行で、有志ボランティアが運営している。10月で15周年。利用者数4万人を達成した。
10月27日は未成線サミット、28日は赤村トロッコ15周年を記念した祭りを開催。多くの乗客がトロッコを楽しんだ。27日の乗客は176人、28日は411人。時刻表を繰り上げてピストン輸送状態になっていた
もともと油須原線は漆生駅と油須原駅を結ぶ計画だった。他の路線と組み合わせて、鹿児島本線の飯塚駅と日豊本線の苅田駅を結ぶ横断ルートになる。しかし、石炭需要の低下によって貨物輸送の減少が顕在化、旅客営業の利用人数も新路線建設の基準に満たないとして建設が中断された。油須原線が未成線で終わった後、周辺の営業路線もほとんど廃止されてしまった。そんな未成線の一部が最後に復活するとは皮肉な結果でもある。
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