超売り手市場なのに「事務職志望の女子学生」があぶれる理由:激変の新卒採用サバイバル(2/3 ページ)
空前の売り手市場の中で7月の女子内定率が減少。銀行などで事務職採用が急減したのが原因。依然として事務職希望の女子大生が多いこともある。
マニュアル的な業務はAIに代替
就職みらい研究所所長の増本全さんによると、7月の女子内定率の減少は、企業が事務職の採用枠を減らしたため大木さんのような女子学生があぶれた結果だという。「若い女性のキャリア志向が高まる一方で、女子学生の約半数は事務職希望とされる。一般事務の多くは6月中に内定が確定する傾向があり、7月1日時点での内定率に影響した」(増本さん)。
実際、メガバンクなどの金融機関は19年卒の一般事務枠を減らす傾向にある。三井住友銀行の19年卒のBC職(いわゆる一般職)の内定者は95人と前年の半数以下。一方で総合職は451人と前年から微増になっている。これまで大人数の一般職を採用してきた他の金融機関でも同様の傾向にあり、全体でも需要が減少したとみられる。
なぜ一般事務枠は減少するのか。増本さんは「銀行は従来の収益構造では厳しくなっている。コールセンターにAI(人工知能)を導入するなどITを入れてマニュアル業務から置き換えている」と指摘する。実際、みずほフィナンシャルグループ(FG)は17年11月の中期決算発表で、17年3月現在で約8万人の人員を10年かけて約6万人にまで減らすと表明した。AIの活用で定型業務を減らし、国内の店舗数も絞る。
一般職枠の減少はもともとの採用人数が多かった銀行の影響が大きい。ただ、人材大手のネオキャリア(東京都新宿区)で新卒採用を担当する小笠原風薫さんは「中小は依然として事務職のニーズがあるが、(事務職の単純作業を減らすための)システムへの投資が十分できている大手の商社やIT系、メーカーでも一般職は減少傾向にある」と指摘する。
企業側が求める人材像の変化も大きい。実際に一般職枠を減らしている大手金融の担当者は「今は労働力の構成が変化している。以前は一般職の女性は結婚したら退職する傾向があったが、今は産休・育休制度も定着してきた。人材が循環していた昔より今は長く働いてもらうことになる」と説明する。
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