日本企業で外国人留学生の採用が進まない真の理由:激変の新卒採用サバイバル(3/3 ページ)
日本企業で外国人留学生の採用が進んでいない。日本独特の就活の慣習に外国人がなじめないほか、企業も高い日本語能力を求めたりネガティブなイメージを持つのが原因。
慣れない外国人採用に企業は挑めるか
結果、面接を受けられたのは5社。「1社は2次面接まで進んだ。うまくいかなかったのはたぶん、日本語能力のせいだと思う……。断られるのは悲しい」(モハメドさん)。卒業後も1カ月日本に残って就活を続けたが希望かなわず、マレーシアに帰国した。
こうした留学生の事情に加え、企業側の原因を指摘する声もある。外国人採用の支援を手掛けるグローバルパワー(東京都台東区)の竹内幸一社長は「留学生は日本人学生より日本企業の研究がうまくできておらず、有名大手ばかり受ける傾向がある」と説明する。
一方で外国人留学生の枠を設けず、日本人と単純に並べて選考している企業も多いという。「留学生がどうしても日本語能力で日本人より引けを取るのは当たり前。さらに、そもそも企業側が外国人留学生の採用に慣れていない。確かに彼らは常識が違ったり日本語のやりとりで面倒が生じることもある。だが(人手不足が深刻な)日本企業は彼らを活用していくほかないのに、そこまでして採用したくないと思っているのではないか」(竹内社長)。さらに中小企業が総合職で外国人を採用しようとする場合、現行の出入国管理法の規定では就労の在留資格が取得しづらくなるという問題もあるという。
インバウンド需要の高まりや企業の活発な海外進出を背景に、母国語と日本語を話せて大学で専門知識を学んだ外国人留学生が活躍できる場は決して少なくない。国は19年から外国人の就労条件を大きく緩和する方針を打ち出しており、人材業界からは「留学生が就職しやすくなる」と期待する声も上がる。
日本での就職がかなわずマレーシアに帰国したモハメドさんだったが、実は母国でその後も日本で就職できる道を探していた。10月に再び訪日して今は経済産業省が民間に委託したインターンシップに参加し、機械メーカーで翻訳作業に取り組んでいる。しかも現在、別の会社のエンジニア職で選考が進んでいるという。
「日本のドラマが好き。特に『下町ロケット』といった池井戸潤さんの作品はエンジニアの心を揺さぶります」。屈託なく話すモハメドさんのような海外の若者を、日本企業は戦力として今後、生かしていけるだろうか。
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