ジムニー 評判通りの楽しさ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
スズキのジムニーは存在そのものが人を楽しくするクルマだ。その新型を1週間試乗してみた。実は走り出してすぐの印象はそう良くもなかったのだが……
ビフォー&アフター
せっかくジムニーを借りたからには、未舗装路も走らねばと、高速に乗って、土地勘のある某所のダートまで移動する。するとジムニーはそこで俄然印象を変えた。腕前をわきまえてミニバンでも走れる程度の道を選んだのだが、それにしたって、舗装路のデコボコの比ではない。ホイールは忙しく上下するし、ボディも煽られたり落下したりを繰り返す。
しかし、そこでのジムニーの身ごなしは別物で、入力は先ほどよりずっと大きいにもかかわらず、胃袋が揺すられるような不快感は完全に消えた。舗装路でもその優秀さを感じていたステアリングは正確かつ安心できるもので、細い曲がりくねった悪道でも不安を感じることは一切ない。スズキは全てのクルマにこのパワステシステムを使えば良い。シートも押さえが効かないと思ったのは一体どこの誰かと訝るほど具合良く感じた。
気付けばトランスファーの切り替えレバーをFRのままで快適に走っていた。特に必要を感じたわけではないが、せっかくだから四輪駆動モードに切り替える。わずかにアンダーステアを増やしながらも、足取りはさらにしっかりした。
いやさすがはジムニー。まあ筆者ごときが走れる程度の悪道で音を上げるはずもない。岩によじ登ったり丸太を乗り越えたりする荒事師たち御用達のクルマにしてみれば、馬鹿にするなと言うところだろう。
さて、問題はこれからだ。小一時間ほどダートを走って再び市街地に戻ると、ジムニーは先ほどまでと印象を変えていた。
何よりアシがよく動く。いちいち胃袋に響いていた嫌な突き上げが消えて、上手くいなすようになっていた。さらに、ロールのゆらっと来る感じもなくなっていた。
最初は「当たりがついたのかな?」と考えた。しかしオドメーターに刻まれた距離はすでに4000キロを超えている。しかもクルマを借りるとき、件の広報氏は「運転席下のサイドシルをちょっと打って凹んでおりまして、キズはありませんし写真に写るほどではないのですが、ご承知おき下さい」と言った。どう考えても荒事師の仕業で、丸太か何かを乗り越えた時に打たない限り、塗装が無事なまま凹むなどということは起こらない。そもそもロードクリアランスが十分取られたジムニーである。筆者が走った程度のダートでは、下回りを打つなどというクリティカルなことは一度もなかった。
要するに、すでに過去にしごかれたクルマであり、今回初めてダートに連れ出された箱入りの個体とは思えない。となると考えられるのはダンパーの熱依存性である。激しく作動したダンパーが暖まって、本来のセッティングを取り戻したのかもしれない。それは一晩放置して明朝乗ってみればはっきりするはずである。
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