“あの事件”の舞台・新潟県十日町市で味わう自然 「サンクス・ツーリズム」のススメ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/7 ページ)
首都圏に住む人々は新潟県十日町市に借りがある。かつてJR東日本が「事件」を起こしたが、7年前には電力不足を救ってくれた。できれば観光に行こう。暮らしを支えてくれる地域に感謝して訪ねる「サンクス・ツーリズム」を提案したい。
十日町市では縄文時代の遺跡と火焔型(かえんがた)土器がたくさん出土されており、「新潟県笹山遺跡出土深鉢形土器」は国宝に認定されている。正直なところ、土器や遺跡への興味はそれほどではないけれど、見に行ってみた。
複雑な飾りの付いた土器の形が面白い。これが神事ではなく、日常で使われたというから興味がわく。縄文人はオシャレだったか。豊かな暮らしだから飾りを作る余裕があったのか。
博物館には、過去から今日に至るまでの人々の暮らしが展示されていた。雪と戦ってきた土地柄がよく分かる。最後に見た街の積雪処理のビデオも面白かった。クルマの往来が少なく、融雪溝がなかったころは、雪の捨て場所がなく、道の真ん中に雪の塔を作っていたという。その伝統が十日町の雪まつりに残ったかもしれない。
十日町市は景色の良いところがたくさんある。2000年から3年に1回の頻度で開催されている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は世界最大級の国際芸術祭という。十日町市や津南町の街中、里山などにたくさんのオブジェがちりばめられていて、探しながらのドライブやツーリングも楽しそうだ。
しかし、見るものばかりで、お金を使う場所が少ない。お金をかけずに観光を楽しめる地域はお財布に優しいけれど、感謝の気持ちでお金を使えないぞ……というわけで、最後に「道の駅 クロス10」に立ち寄り、お土産を買い込んだ。火焔型土器の絵が入った一筆箋など、ビジネスレターに添えてみようか。
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