高卒でプロ野球を戦力外 16年後に「公認会計士」になった男の逆転人生:戦力外になった後輩に経験伝えたい(1/6 ページ)
阪神タイガースから戦力外通告を受けたものの、その後公認会計士になった元投手、奥村武博さん(39)。引退した選手が第二の人生で成功できずにトラブルを起こすケースが多い中、いかにして成功できたのか。かつての挫折と、そこから這い上がった経験を聞いた。
福岡ソフトバンクホークスが2年連続日本一を達成したのち、日米野球では5勝1敗の成績で日本代表が勝利し、2018年のプロ野球シーズンが幕を閉じた。日本シリーズの終了直後に終わった戦力外通告期間では、かつてのスター選手や期待に応えられなかった若手などが来季の契約を結ばない旨を告げられ、人生の岐路に立つこととなった。
他球団での現役続行、指導者への転身、ビジネス界への挑戦――。選択肢はさまざまだが、対象となった選手のうち、若手は11月をめどに選手寮から退去しなければならない。また、先ごろ行われたトライアウトで他球団に拾われた選手以外は、年俸が支給される12月中に次の仕事を見つけない限り、翌年1月からは無収入となってしまう。
プロ野球という華やかな世界の裏側では、こうして毎年のように、多くの選手が身の振り方に迷う状況に置かれる。引退した選手が第二の人生で成功できずにトラブルを起こし、大きく報じられるケースもある。「自分には野球しかない」と考える人や、現役時代の栄光が忘れられない人もおり、新しく進むべき道を見いだすのはなかなかに難しい。
元プロ野球選手で唯一、公認会計士になった男
17年前に戦力外通告を受け、同様の苦境に立たされたものの、紆余曲折を経て、元プロ野球選手として初めて公認会計士試験に合格。現在は都内の税理士法人や監査法人で業務を行うなど、新たな道を歩んでいる人物がいる。元阪神タイガース投手の奥村武博さん(39)だ。
奥村さんは1998年にドラフト6位で阪神に投手として入団。同期には、のちにエースとなり、米大リーグ・ヤンキースにも所属した井川慶投手がいる。だが、奥村さんはけがの影響などで活躍できず、2001年に戦力外通告を受け引退。打撃投手と飲食店勤務を経て、13年に公認会計士試験に合格した。
現在は本業と並行し、アスリートのセカンドキャリアを支援する団体「アスリートデュアルキャリア推進機構(ADCPA)」を立ち上げ、引退した選手の進路指導などの活動にも取り組んでいる。
厳しい競争を勝ち抜き、「プロ野球選手」「公認会計士試験」という、“東京大学に合格するよりも難しい”と例えられる2つの職業を経験した奥村さん。過去にどんな野球人生を送り、挫折を乗り越え、セカンドキャリアを切り開いたのだろうか。これまでの経験を聞いた。
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