5年間ヒトヤスミしていたのに、なぜ「一休」は再成長したのか:水曜インタビュー劇場(45%増公演)(4/6 ページ)
宿泊予約サイトを運営する「一休」の取扱高が、伸びに伸びている。2007年〜11年にかけては伸び悩んでいたのに、なぜ再成長したのか。その秘密について、同社の榊社長に聞いたところ……。
「戦わないで、戦う」作戦
土肥: 以前は宿泊施設のほうを見ていたけれども、お客さんのほうを見るようにした。会社で例えると、楽天型だったのをアマゾン型に転換したわけですね。楽天の主な収入源は出店企業からの手数料なので、お客さんは「企業」。一方、アマゾンの主な収入源は、自社で仕入れた商品を販売することなので、お客さんは「消費者」。このように考えると、会社を創業するほどの大変さが伴ったかと思うのですが、ここで疑問がひとつ。
高級ホテルを紹介していて売り上げが伸び悩んでいるのであれば、普通のところを紹介すればよかったのではないでしょうか。ホテルのプールで泳ぐことができて1泊3万円、東京の夜景を見ることができて1泊5万円、部屋の露天風呂に入ることができて1泊10万円といったところではなくて、サラリーマンが出張で利用できそうなビジネスホテルを紹介すれば売り上げは伸びるのでは? (素人コンサルの意見、その1)
榊: やれば、売り上げは伸びるでしょう。ただ、ブランドのイメージは変わってしまいますし、コストも増えることになる。もし参入すれば、大きな会社と戦わなければいけません。資金力もあるし、人もたくさんいる。そのような相手と、なぜ戦わなければいけないのか。
先方からすれば、こちらがとがればとがるほど戦いにくくなると思うんですよね。低価格から高価格までたくさんの宿泊施設を扱っているなかで、富裕層だけをターゲットにしている一休を相手にするのは難しいのではないかと。
土肥: 土俵には上がらないと?
榊: 「戦わないで、戦う」といった感じですね。
土肥: では、違うブランドで運営するのはどうでしょうか? 「三休で、サラリーマンの出張先を探せます」といった具合に。(素人コンサルの意見、その2)
榊: 理論上はアリです。ただ、当社が手掛けている富裕層の市場はまだまだ成長余地があると思っているんです。
土肥: 利用者の数や単価が伸びていると?
榊: はい。お客さんの利用金額が大きく伸びているんですよね。10年と17年の数字を比較すると、年間40〜79万円使う人は3.7倍も伸びている。80〜199万円使う人も5.3倍、200万以上は10.0倍、それぞれ増えているんですよね。
土肥: (資料を見て)30万円以下でも、2倍ほど伸びている。
榊: 過去のデータを見ると、利用者数も増えているし、単価も伸びている。そうした状況のなかで、来年は利用者が急減するといったことは考えにくいんですよね。
関連記事
- 築46年なのに、なぜ「中銀カプセルタワー」に人は集まるのか
新橋駅から徒歩5分ほどのところにある「中銀カプセルタワービル」をご存じだろうか。立方体の箱がたくさん積まれていて、丸い窓が並んでいる。1972年に建てられたこのビルが、数年前からジワジワ人気が出ているのだ。その謎に迫ったところ……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
6畳弱の狭い物件が人気を集めていることをご存じだろうか。物件名は「QUQURI(ククリ)」。運営をしているピリタスの社長に、その理由を聞いたところ……。 - なぜ伊藤忠は18年ぶりに「独身寮」を復活させたのか
伊藤忠が18年ぶりに「独身寮」を復活させた。業績低迷を受けて、2000年に社有の寮を売却したのに、なぜこのタイミングで建てたのか。建物は7階建てで、部屋は361室。国内最大級の寮のナカはどうなっているのかというと……。 - 東京で「フードトラック」が、どんどん増えている秘密
平日の昼。毎日同じようなモノを食べていて、飽きているビジネスパーソンも多いのでは。そんなランチ難民とも言える人を救うかもしれないサービスが登場している。フードトラックと空きスペースがあるオフィスビルをマッチングさせるサービスで、そこで提供されるランチを利用する人が増えているのだ。 - 700台のカメラを設置して、スーパーの「トライアル」は何を分析しているのか
スーパーマーケットの「トライアル」が、近未来を感じさせられる店舗を構えた。店内には700台のカメラを設置して、人の動きや商品棚をウォッチしているという。最先端の技術を導入して、どんなことが分かってきたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.