「働かない」ことばかり注目されている日本は大丈夫か?:ここが変だよ、日本の「働き方改革」(4/4 ページ)
15年間勤めた経済産業省を退職し、ベンチャー企業を起業した元官僚が語る「働き方」とは? 第1回は「働かない」ことを重視し過ぎている日本の働き方改革にメスを入れる。
頑張って働くことの重大さを再認識したい
ITやインターネットの進展などで働くためのツールが大きく変貌した今、深夜まで煌々と電気をつけながら残業を続ける働き方が時代遅れになりつつあることは間違いないだろう。産業革命後に工場労働者を想定して作られたであろう定時出勤・定時退社、月給制、最低賃金などは既に時代に合わなくなっていると感じるし、日本では未だに根強く残っている終身雇用、年功序列、専業制(兼業・副業の禁止)も限界を迎えているように思う。
詳しくは連載第3回で述べたいと思うが、Googleのオフィス「Google Campus」のように、いつでも仕事に没頭できるよう、会社で常時ちゃんとした食事をとることができて、さまざまな新しいアイデアを具現化できるような新しい働き方を実現できる制度や環境の整備が必要だろう。
先日、中国の深センに初めて足を運ぶ機会があった。現地の中国人経営者によると、40年前は30万人程度の人口だった町が、現在は1200万人を超える大都市へと変貌し、働く人の平均年齢はすごく若く、26歳程度だという。バブル崩壊後に日本がデフレから脱却できないでいる間に世界は急成長したのだ。
私が最近追いかけているモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)の分野でも、スマートフォンが広く普及し始めた2010年以降に世界中でさまざまなスタートアップが誕生している。
Uber、Lyft、Grab、Didiといったライドシェア企業を筆頭に、タクシーの配車サービス、自転車のシェアリング、カーシェアリング、駐車場の事前予約サービス、路上パーキングの管理システムなど多種多様なビジネスが生まれ続けている。現在は、M&Aや大企業による買収などが進むとともに、複数の移動サービスを統合して提供するMaaSという新しいビジネスが台頭してきており、日本は周回どころか、2周回、3周回遅れている状況にある。
こういう現状を鑑みると、日本だけはできるだけ働かないでしっかりと休みと給料をもらいたいという傾向が広がることについて強い懸念を覚える。多様な人種・多様な価値観を持った人たちが自由度を持ちながら楽しく働けることが前提にはなるが、頑張って働く、世界と競争する、頑張った人が稼ぎを得られるという資本主義の原理を再認識すべきではないだろうか。
子どもの時に、「アリとキリギリス」というイソップ寓話を聞かされ、まじめに働くアリの重要性を教え込まれたものだが、「働かない」権利を主張しすぎることでキリギリス化しつつある日本社会の現状に不安を感じてならない。(次回に続く)
著者プロフィール
伊藤慎介(いとう しんすけ)
株式会社rimOnO 代表取締役社長
1999年に旧通商産業省(経済産業省)に入省し、自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの分野で複数の国家プロジェクトに携わる。2014年に退官し、同年9月に工業デザイナーと共に超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnOを設立。2016年5月に布製ボディの超小型電気自動車”rimOnO Prototype 01”を発表。現在は、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の推進などモビリティ分野のイノベーション活動に従事。KPMGモビリティ研究所 アドバイザー、あずさ監査法人 総合研究所 顧問、ミズショー株式会社 社外取締役、亜細亜大学 都市創造学部都市創造学科 講師などを兼務。
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