連載
“パワハラ放置”社会が「子どものいじめ」を増長? 「見て見ぬふり」の大きな代償:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
「パワハラ防止措置」の法制化がようやく進められることになった。だが、それだけでなく「自分たちの問題」として考えることが必要だ。大人のパワハラ、あるいは「見て見ぬふり」という行動が、子どもたちの振る舞いにも影を落としている。
日本のいじめは「大人社会の縮図」
「人は、なぜ他者を攻撃するのか?」
この問いは、古くから心理学者や社会学者たちの間で議論されてきました。
その中の1人である心理学者のJ.T.テダスキらは、「攻撃は対処行動の一つ」と捉え、「人間は何らかの恐怖を感じたり、危機的状況に遭遇したりすると、相手を攻撃したり強制的に従わせたりするなどの策を講じることで、自分の社会的地位や社会的アイデンティティーを主張する」と説明。これは「社会的機能説」と呼ばれています。
また、同じく心理学者のアルバート・バンデューラは、「攻撃は社会の中で学習し、身に付け、維持された社会行動である」とし、こちらは「社会的学習説」と呼ばれています。
どちらも「いじめや攻撃」を、環境が生む病であるとしている点は共通していますが、日本の子どもたちのいじめは、大人社会の縮図、すなわち「社会的学習説」的側面が強いのではないか。そんな懸念が数年前から研究者の間で広まっているのです。
きっかけは、国立教育政策研究所が16年に行った調査結果です。
これまでの調査で、日本は「暴力を伴ういじめ」が他国よりも少ないことが明らかになっていました。
そこで研究者グループは、日本同様に「暴力を伴ういじめ」が少ないスウェーデンと共同で「いじめの実態把握」の調査を実施。その結果、次のことが分かりました。
関連記事
- “やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸
消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。 - 減り続ける「管理職のイス」と“死亡率”急上昇のリアル
「管理職になりたくない」人が6割を占める調査結果が問題になっているが、管理職の椅子が減っている現状を考えれば、希望者は4割で十分。それよりも、管理職の在り方そのものを見つめ直す必要がある。 - 医師の命は軽い? 過労自殺を生み続ける“加害者”の正体
「過労死」「過労自殺」は何度も問題になっているが、2018年版「過労死白書」では働く人たちの苦悩が続いている現状が浮き彫りになった。過労自殺は長時間労働だけが問題なのではない。教職員や医師・看護師の働き方の分析から、私たちが考えるべきこととは? - 「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。 - 詐術、脅迫、暴力、洗脳 「辞めたくても辞めさせないブラック企業」急増の真相
「会社を辞めたいのに辞めさせてくれない」という人の相談が増えている。厚生労働省の調査では、会社に辞めたいと伝えても辞めさせてくれない「自己都合退職」の相談が2番目に多く、3万8945件(相談件数の12.8%)もあった。「退職トラブル」の実態とブラック企業への対策を探る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.