ニュース
「乃が美」創業者が自著で語った高級「生」食パンの「生」の意味:1日に5万本売れる(3/3 ページ)
1日に5万本もの高級「生」食パンを売る「乃が美」。2013年に創業してからわずか5年で100店舗以上にまで成長した。創業時のエピソードや知られざる同社の戦略を創業者の自著から読み解く
新参者に冷たかったパン業界
パン作りを決意した阪上氏だが、パンに関しては素人同然だった。そこで、自身が経営するバイキング店で店長をしていた中井裕之氏にパンの製法を学ばせることにした。
中井氏が修行している間、阪上氏はパン店のオープンに向けて準備をしていたが、壁にぶつかってしまう。「新参者」に対して業界関係者が原料となるバターやパンを焼く機械をなかなか売ってくれなかったのだ。結局はトラック運転手時代の知り合いのつてを頼ることで調達先を見つけたのだが、阪上氏は「狭い業界、新規参入の噂はすぐ広がる。既存店のどこかが『あそこには卸すな』といえば、業者としては逆らえないのだろう」と分析している。
高級「生」食パンの「生」の意味
原料や機械を調達した阪上氏はパン作りにまい進し、1号店のオープンにこぎつける。オープン当初は値段の高さや知名度の低さから、売れない日々が続いたが、コツコツと営業活動をして徐々にお客の支持を得ていった。
阪上氏はよく「『生』ってなに?」「火を通してないの?」という質問をお客から受けるという。そのたびに、「いえいえ。『生』といいますのは、そのまま食べてもおいしくて、耳までふんわり口どけの良いパン、という意味なんですよ」と回答していると本書で明かしている。
本書を読むと、新規事業を立ち上げ、軌道に乗せるまでには血のにじむような苦労があったのだとしみじみ思わされる。しかし、だからこそ成功したときの達成感も大きいのだろう。
関連記事
- 大阪勢が東京に“殴り込み” 過熱する高級食パン戦争
大阪でスタートした高級食パン専門店が東京に進出してきている。一方、東京でも高級食パン専門店が次々とオープンしている。過熱する高級食パン戦争の行方は? - すし屋「久兵衛」VS. ホテルオークラ 泥仕合の背後に“下剋上”への脅えと焦り
高級すし店「銀座 久兵衛」がホテルオークラともめている。背景にあるのは高級すし店とホテル業界の競争激化による地位低下だ。転落しようとしている両者が抱く焦りとは。 - 回転すしの厨房はどうなっている? くら寿司で働く若きリーダーに見せてもらった
大手回転すしチェーンは安くてうまいすしを迅速に提供することで成長を続けてきたが、そのビジネスを支える厨房はどのようになっているのだろうか。くら寿司の新店オープンを次々と手掛ける若きリーダーに話を聞いた。 - 5万人を引き寄せる「パン祭り」を生んだ、まちづくりへの思い
2日間で5万人が訪れた「世田谷パン祭り」。全国のパン屋のパンを買うために、最大1時間半待ちの行列もできた。人気イベントはどのように生まれ、なぜ多くの人を引き付けるのか。仕掛け人に聞いた。 - 業界3位に躍進した「日乃屋カレー」 リピーターを生む味の原点は“昭和の町中華”
2011年に創業した日乃屋カレーが店舗数を増やし、業界3位に躍進した。家庭的な“ジャパニーズカレー”で、甘辛い味が特徴。急成長の秘密とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.