ライバルと明暗 栄華を誇った「小僧寿し」だけが大きく苦戦した理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
かつて2300店超を誇った「小僧寿し」だが、近年は回転すしや持ち帰りすしチェーンの猛追で苦戦していた。同じ持ち帰りのチェーンが踏みとどまってるのになぜ小僧寿しだけ苦戦しているのか。
なにがいけなかったのか
こうして京樽やちよだ鮨の動向を見ると、この頃までに展開していた低価格なすしに特化する多業種化戦略は間違ってはいなかった。しかし、14年からラーメン「麺や小僧」を展開したり、宅配ピザのシカゴピザと提携してすしとピザと丼の複合テークアウト店を新しく始めたりしたが、ことごとく失敗し、混迷を深めている。
また、14年8月には、三菱商事出身で海外展開も期待された当時の大西好祐社長が業務上横領で解任された。こともあろうに日本企業のリーダーたる立場の上場企業が、赤字体質を改善するための経営方針を社内外から公募するという前代未聞の事態にも発展した。
小僧寿しが再び成長する日は来るのか。店舗が全般的に小さいので、「キッチンオリジン」のようにイートインを設けるのも難しそうだ。
近年は、宅配代行やサービス付高齢者向け住宅にも参入したが、いずれも赤字で、もうかりそうなものを手当たり次第始めて損失を出している印象は否めない。
回転すしばかりでなく、宅配すしも伸張し、スーパーや百貨店各社も鮮魚売場を拡大してつくり立てのすしを販売する中、経営陣は厳しいかじ取りを迫られている。しかし、これらの困難を乗り越えて、かつて燦然(さんぜん)と輝いていた小僧寿しの屋号を守っていってほしいものだ。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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