ライバルと明暗 栄華を誇った「小僧寿し」だけが大きく苦戦した理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)
かつて2300店超を誇った「小僧寿し」だが、近年は回転すしや持ち帰りすしチェーンの猛追で苦戦していた。同じ持ち帰りのチェーンが踏みとどまってるのになぜ小僧寿しだけ苦戦しているのか。
宅配すしの成長も脅威に
イオンといったショッピングセンターの売り上げは、スーパー部門の伸び悩みを好調な専門店がカバーしている構造になっており、顧客は同じ建物内にあっても、スーパーと専門店を明確に使い分けている。小僧寿しが顧客の行動、心理を読み誤り、ショッピングセンターを攻めなかったので、ちよだ鮨と京樽が代わって入り込んだ。そして、スーパーの鮮魚コーナーもすしを提供するようになって小僧寿しの脅威となってしまっている。
さらには、「銀のさら」のような機動性に富んだ宅配専門のすしチェーンがじわじわと浸透して、出前のニーズに対応している。このように、小僧寿しに残された最後の砦である駅や大型スーパーから離れた住宅街までもが崩されかけている。
持ち帰りずしのライバルは伸長
小僧寿しは06年にすかいらーくに買収され、さらに12年にはコンサンティング会社のイコールパートナーズ(東京都千代田区)に買収された。14年にイコールが株式の一部を放出して、関連会社から外れた。この間、宅配すし「札幌海鮮丸」や回転すし「活鮮」などを展開したり、小僧寿しの価格を下げてCMを大量に流したりしたがあまり効果なく、かえって赤字が拡大。事業継続のため、これらの新業態を売却せざるを得なくなった。
京樽は一度倒産したが、持ち帰りずしの他にも、回転すし「海鮮三崎港」、低価格江戸前ずし「すし三崎丸」などを展開。11年に吉野家ホールディングスに買収され、計330店ほどある。さらに、今期の既存店売上高を前年比1.9%増と見込んでおり、復調している。年商は267億円(2018年2月期)で、今は持ち帰りずし最大手である。
ちよだ鮨も、持ち帰りずしの他にも、回転すしの「築地銀一丁」と「築地銀一貫」、立食いずし「築地すし兆」などを有し、首都圏で180店ほどを展開。98年に200店を突破してからは店舗数こそ漸減しているが、年商は138億円(2018年3月期)と小僧寿しをはるかに上回っている。
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