ソ連で生まれた1100代目の「ハエ」が、なぜ注目されているのか:水曜インタビュー劇場(45年以上前公演)(3/7 ページ)
旧ソ連で生まれたハエが、世界を救うかもしれない――。このような話を聞いても「はあ? バカじゃないの?」と思われたかもしれないが、日本でひそかに選別交配を続けたことで、飼料と肥料を大量生産できる話があるのだ。どういった話かというと……。
ストレスに強く、すぐに太るイエバエを育成
土肥: ロシアに面白い技術はないかなあ? と探す一方で、イエバエにせっせとエサをやっていたんですよね。当時、どのような気持ちだったのでしょうか?
串間: ワタシはビジネスマンではなくて、理系の技術者。ということもあって、目の前にいるイエバエに大きなビジネスチャンスがあることはよく分かりませんでした。ただ、飼料や肥料をつくることができるので、「世の中に必要とされるモノだ」と考えていたのですが、いつその日がやって来るのかよく分からず、エサをやっていました。
そうした日々が続いていたわけですが、5年ほど前からちょこちょこ声がかかるようになりました。「この技術は面白い」「一緒にやりませんか」と。そろそろいいタイミングではないかと考え、2016年12月に会社を立ち上げて、イエバエ事業を引き継ぐことにしました。
土肥: イエバエを使って飼料や肥料をつくりだすわけですが、そもそもどうやってつくっているのでしょうか?
流郷: 基本的な仕組みはとてもシンプルなんです。生ゴミや動物の排せつ物など有機廃棄物を用意して、専用トレーの上にイエバエの卵をパラパラとまく。飼育室に放置するだけで、大きく育った幼虫が飼料になって、幼虫の排せつ物が肥料になっているんです。不要なゴミがわずか1週間で、飼料と肥料になるんですよね。ちなみに、一般的なイエバエの場合、3週間ほどかかります。
土肥: 基本的な流れは分かりました。それにしても、なぜ45年間もかけて、交配を重ねて品種改良を続けてきたのでしょうか?
流郷: ストレスに強くて、すぐに太るイエバエを育成するためなんですよね。
満員電車のなかで、通勤をするのは大変ですよね。人間と同じように、ハエも過密空間のなかで生きていくのは大変なんです。それでも生きていける能力があって、卵をよく産む。その卵がふ化して、ふ化した幼虫は太りやすい。こうした種を見つけ出して、選別交配しているんです。
旧ソ連は宇宙で長期滞在するために、イエバエに注目しました。食料循環サイクルに活用する予定だったのですが、過密空間の中だったので、すぐに死んでしまったんですよね。旧ソ連は過密空間のなかでも、生きていける種を選別するノウハウを持っていたので、それを先代が購入したわけです。
関連記事
- 築46年なのに、なぜ「中銀カプセルタワー」に人は集まるのか
新橋駅から徒歩5分ほどのところにある「中銀カプセルタワービル」をご存じだろうか。立方体の箱がたくさん積まれていて、丸い窓が並んでいる。1972年に建てられたこのビルが、数年前からジワジワ人気が出ているのだ。その謎に迫ったところ……。 - 5年間ヒトヤスミしていたのに、なぜ「一休」は再成長したのか
宿泊予約サイトを運営する「一休」の取扱高が、伸びに伸びている。2007年〜11年にかけては伸び悩んでいたのに、なぜ再成長したのか。その秘密について、同社の榊社長に聞いたところ……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
6畳弱の狭い物件が人気を集めていることをご存じだろうか。物件名は「QUQURI(ククリ)」。運営をしているピリタスの社長に、その理由を聞いたところ……。 - なぜ「スーツみたいな作業着」をつくって、しかも売れているのか
スーツのような作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が売れている。製造しているのはアパレルメーカーでもなく、作業着メーカーでもない。水道工事などを行っている会社がつくったわけだが、なぜこのような商品を開発したのか。その狙いを聞いたところ……。 - なぜ伊藤忠は18年ぶりに「独身寮」を復活させたのか
伊藤忠が18年ぶりに「独身寮」を復活させた。業績低迷を受けて、2000年に社有の寮を売却したのに、なぜこのタイミングで建てたのか。建物は7階建てで、部屋は361室。国内最大級の寮のナカはどうなっているのかというと……。 - 東京で「フードトラック」が、どんどん増えている秘密
平日の昼。毎日同じようなモノを食べていて、飽きているビジネスパーソンも多いのでは。そんなランチ難民とも言える人を救うかもしれないサービスが登場している。フードトラックと空きスペースがあるオフィスビルをマッチングさせるサービスで、そこで提供されるランチを利用する人が増えているのだ。 - 700台のカメラを設置して、スーパーの「トライアル」は何を分析しているのか
スーパーマーケットの「トライアル」が、近未来を感じさせられる店舗を構えた。店内には700台のカメラを設置して、人の動きや商品棚をウォッチしているという。最先端の技術を導入して、どんなことが分かってきたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.