低迷していた「カルピス」が、右肩上がりの再成長を遂げた理由:10年間で1.5倍に(2/4 ページ)
2019年に100周年を迎える「カルピス」がいま、再び成長している。販売量は横ばいで推移していたのに、10年ほど前から右肩上がりに伸びているのだ。変わらない味のロングセラーブランドが再成長できたのはなぜだろうか。
「白くて甘い飲み物」? 認識されなくなった価値
99年前の1919年、内モンゴルで作られていた「酸乳」をヒントに、創業者の三島海雲が開発したカルピスは、日本初の乳酸菌飲料として世に出ることになった。「初恋の味」というキャッチフレーズととともに一般家庭に広まると、その後は高度成長期まで堅調な成長を続ける。
ところが、80年代になると徐々に環境が変わってくる。お茶やスポーツ飲料など、屋外に持ち出してそのまま飲める缶入り飲料が普及してきたのだ。カルピスはコップに注いで薄めて飲むため、家で作って飲むことが前提。手軽な競合商品に押され、販売は落ち込んでいった。
低迷していたカルピスを救ったのが、91年に発売した「カルピスウォーター」だ。薄めずにそのままカルピスの味を楽しめるという手軽さと新しさで大ヒットとなる。92年にはカルピスウォーター単体で2450万ケースを販売し、商品単体としては今でも過去最高の記録となっている。
しかし、それ以降はヒット商品に恵まれず、2000年ごろからはお茶やミネラルウオーターのブランドも市場に定着。お茶や水を「買って飲む」のが当たり前になり、飲料の選択肢は増えた。それに伴って、価格競争も激しくなっていった。
どうすれば再び低迷から抜け出せるのか。一つのきっかけになったのは、苦戦が続いていた07年に実施した調査結果だ。
それはブランドにとってショックな結果だったという。カルピスのブランドイメージを調査したところ、「白くて甘い飲み物」というイメージしかなかったのだ。アサヒ飲料 マーケティング二部 乳性グループの田中孝一郎氏は「カルピスといえば乳由来の白色、乳酸菌による甘みと酸味。それがいつの間にか認識されなくなってしまったことに気付きました」と振り返る。
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