成功のキャリア観はもう古い? 健やかさのキャリア観へ:次代のキャリア観(2/4 ページ)
人生100年時代を迎え、働き方改革以上に大事になるのは、どのようなキャリア観を持つかではないでしょうか。これまでは「成功を目指すキャリア」が主流だったかもしれませんが、これからは「健やかさのキャリア」が重視されるはず。その理由は……。
みながこぞって経済的価値のものさしにそって、単線的に上昇していくことだけを善とし、自分が有能に見られたいという「成功のキャリア」観になにか違和感を持つのは、ゆとり世代として育った感受性の強い若者なら当然です。また、ビジネスの現場がますます競争、成果、スピードを求める流れに、心身はこれ以上ついていけなくなっているのでしょう。どこかで生物的な保存システムのスイッチが入り、生命個体を守るためにも、「怠けろ」「逃げろ」という信号を出しているのかもしれません。いま、振り子の逆側に「自己防衛のキャリア」観が生じつつあるのだと思います。
振り子の一端に「成功のキャリア」があり、また別の一端に「自己防衛のキャリア」が生じる。しかし私は、この2つの極の間の適当なところで折り合いをつけていくというのではなく、両者を止揚したところに「健やかさのキャリア」があると思っています。そしてこの「健やかさのキャリア」こそ、次代の大切なキャリア観として育まれるべきものだと感じています。
人生100年時代を迎え、私たちが長きキャリアのマラソンを走っていくために大事なことは心身の健康です。「成功のキャリア」を目指すことは、ややもすると、心身を痛めつけながら戦うことにもなりかねません。20代や30代前半までなら、成功へのあこがれや、旺盛な自己承認欲求に支えられてがんばることもできますが、30代後半からはそれがしんどくなってきます。実際、それで心身を病む人や、一見栄光を手にしている人でも途中で燃え尽きてしまってつらい40代、50代を送る人もいます。
また、健康が大事だからといって、「自己防衛のキャリア」に閉じこもってみても、心身は鍛えられることなく、ぜい弱なまま歳を重ねることになります。中高年になって、いざ何か重い試練が降りかかったらそれを乗り越えていけるでしょうか。
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