成功のキャリア観はもう古い? 健やかさのキャリア観へ:次代のキャリア観(3/4 ページ)
人生100年時代を迎え、働き方改革以上に大事になるのは、どのようなキャリア観を持つかではないでしょうか。これまでは「成功を目指すキャリア」が主流だったかもしれませんが、これからは「健やかさのキャリア」が重視されるはず。その理由は……。
「健やかさのキャリア」は、“well-being”の状態を目指します。自分という存在をよく(良く、善く、好く)開き、よく保っていこうという態度です。
すなわち、仕事生活において、
- 「在り方」にまなざしを置き、そこから理想像を描いている
- その実現に向かう負荷やリスクを悠然と受け入れられる
- 働く意識を他者・社会に開いていて、共創的・貢献的な「やりがい」という内発の力を湧かせている
- その結果、大きな健康を得て、強い安定の状態にある
「健やか」という価値は、普通すぎて面白くないと感じる方もいるかもしれません。しかし、それはひとつの強さであり、在り方のもとに生き生きとすることであり、実現はそう簡単ではありません。むしろ経済的尺度によって単純に勝ち負けを決める「成功のキャリア」よりもはるかに複雑で奥が深いものといえます。
心身の健やかさという観点で「働くこと、生きること」をながめるとき、そこには3つのフェーズがあるように思います。
まず大前提として「身体、生活の維持」があります。そのためにお金がいる。だから私たちは稼ぐために働く。これがフェーズ?です。この地球上にはこのフェーズ?を維持するだけでも大変な人たちがいます。発展途上国や紛争地域に生まれた人びとは、何かしら仕事を見つけ、食事にありつき、命を1日1日持たせることが人生目的になっています。
しかし、平成ニッポンの世に生まれた私たちは、幸運にも、少しがんばることでフェーズ?は満たすことができます。そこで目指すところは、「もっと持ちたい」「快適でいたい」というフェーズ?の活動です。確かにこのフェーズでの生活は穏やかであり、健やかだといえます。しかし、この状態は言ってみれば「小さな健康」でしかありません。物質的な所有に支えられた生活、快に寄りかかる心は、実はぜい弱で安定しません。
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