成功のキャリア観はもう古い? 健やかさのキャリア観へ:次代のキャリア観(4/4 ページ)
人生100年時代を迎え、働き方改革以上に大事になるのは、どのようなキャリア観を持つかではないでしょうか。これまでは「成功を目指すキャリア」が主流だったかもしれませんが、これからは「健やかさのキャリア」が重視されるはず。その理由は……。
実のところ、「成功のキャリア」にしても「自己防衛のキャリア」にしても、それによって到達できるのは、このフェーズ?の小さな健康です。
成功や自己防衛を超えて、フェーズ?の大きな健康を得るためには、創造や貢献に軸足を置いた活動に邁進することです。そして自分という能力的存在が十全に開いているなと感じられるとき、それが最も強く安定した状態であり、長きキャリアの道のりを渡っていける源泉力となります。
このように「健やかさのキャリア」という観点は、これからの時代にとても大切になってくるものだと思います。健やかであるとは、なにも成功や自己防衛を否定するものではありません。何か自分の満たしたい価値や在り方があって、その実現に邁進する過程で、結果的に成功が手に入ってくる、あるいは、自然のうちに心身が鍛えられ自分を守ることにつながってくる、そういうとらえ方です。
事業経営の分野においても、まさに「健康経営」が叫ばれています。企業組織における長足の成長と存続を考えた場合、従業員に対し「成功のキャリア」をあおるよりも、「健やかさのキャリア」とともに実現していくよう努めるほうが賢明な方向性のように思えます。「健やかさ/well-being」――働く個にとっても組織にとっても、追求するに値する価値です。(村山昇)
著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行なう。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。
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