なぜ人は「あおり運転」に手を染めてしまうのか:普通の人も犯罪者予備軍だ(2/3 ページ)
東名高速道路で悪質なあおり運転を受け、一家4人が死傷する事故が起きるなど、あおり運転の危険性が世間を騒がせている。この事件以外にも、“普通の人”があおり運転に手を染めるケースもあるという。なぜ人はあおりたくなるのか。どうすれば衝動を抑えられるのか。日本アンガ―マネジメント協会の安藤俊介理事長に聞いた。
「あおり運転はかっこいい」という思考から抜け出すべき
また安藤氏によると、あおり運転をしてしまう人は、高価な車に自信と愛着を持ちすぎている場合や、価値観が比較的幼い場合が多いという。
「『大きい車・高い車に乗っている自分は偉い』という安易な価値観を持つ人は少なからずいる。車と自分を同一視しているので、(小さな車に)クラクションを鳴らされるなどのきっかけで『なめられた』『けんかを売られた』と感じるようだ」
「また、あおり運転やけんかなどの粋がった行動を取ることを『かっこいい』と思う幼い価値観を持つ人もいる。彼・彼女らは、社会経験を積んだり人間関係を変えたりするなどして、そうした思考から抜け出さねばならない」
“普通の人”も犯罪者になる
東名高速道路であおり運転を行った犯人は、事故の直前に警察車両に対してあおり運転を行っていたことが発覚したほか、被害者に宛てた謝罪文に「事故がなければ彼女と結婚する予定だった」と記すなど、奇特な人間性の持ち主だと報じられている。
だが安藤氏は「あおり運転をしてしまうのは変わった人だけではない」と指摘。「話題になっていないだけで、平凡なサラリーマンがふとしたきっかけでイライラし、あおり運転に走るケースもある。普通の人が一気に犯罪者になり得るのがあおり運転の怖いところだ」とみる。
では、前の車の速度が遅い時や、後ろにいた車に追い越された時などに、われわれがつい“魔が差して”あおり運転に手を染めることを防ぐには、どんな心掛けが必要なのか。
車内に家族写真を貼っておくべき
安藤氏は「優先順位を整理することが重要。運転する目的は『安全に目的地に到着すること』であり、『見知らぬドライバーとの勝ち負けを争うこと』ではないことを改めて理解してほしい。そうすれば、抜かした、抜かされたといった争いは小さなことだと気付くはずだ」と提言する。
車内に家族写真を貼っておくことも勧めている。「運転中にイライラしたときに家族写真を見ると『あおり運転をしている自分の姿を大切な人たちに見せられるのか』と頭を冷やす効果がある。『警察沙汰になると家族を全て失うかもしれない』と警告する効果もある」という。
このほか、運転中にイライラを感じた時に、「大丈夫、大丈夫」「気にすることじゃないよ」といったフレーズや、家族やペットの名前など愛着のある言葉を、口に出したり頭の中でつぶやいたりする方法もわれに返る上で効果的としている。
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