野球盤で追い求める“本物” 「9コース投げ分け」進化の舞台裏:「データ野球」も疑似体験(2/4 ページ)
誕生60周年の「野球盤」が、どんどん進化している。最新モデルでは、投手が9コースに投げ分けたり、球速と投球コースをリアルタイムで電光掲示板に表示したりする機能を搭載。このような進化をどう実現したのか。エポック社の古田望さんに聞いた。
「9コース投げ分け」をどうやって実現したのか
18年に発売した「モンスターコントロール」は、古田さんにとって「一つの集大成」だという。その目玉となる新機能が「9コース投げ分け」だ。
球が空中を飛ぶ「3Dピッチング機能」を初めて搭載したのは、15年に発売した「3Dエース」。そこから、球が飛ぶ位置をさらに細かく調整できるように改良していくのは、本物の野球に近づける上で自然な流れだった。
そのアイデアをもとに試作品を作ってみたものの、当初は商品になる水準ではなかった。球を投げ分けるための装置が大きく、野球盤全体が高さ10〜15センチほどの大掛かりなものになってしまったからだ。また、投げるまでの操作も複雑だった。そこでいったん開発が頓挫していた。
古田さんはその状態から再び開発に着手。約2年をかけて現在の形に行き着いた。設計をやり直し、一から仕組みを考え、試作を重ねたという。
従来の試作品は、球の発射口が縦横それぞれ3段階の可動範囲を持っており、それぞれ異なる発射位置から狙ったコースに球が飛ぶ仕組みだった。そうすると、どうしても装置が大きくなってしまう。また、投手が狙っているコースが、投げる前に打者側から見えてしまい、戦術を読み合う面白さが失われてしまう。投球操作に時間がかかることも欠点だった。
投球装置をもっとコンパクトにするために、古田さんが注目したのは「球が山なりになる角度をどう変えられるか」ということ。球が勢いよく飛び出せば、飛ぶ角度が大きくなり、高い位置で打者のところまで届く。反対に、ゆっくりと球が出れば、飛んだときの勢いはなく、打者まで届くときには地面すれすれの位置になる。「ボールの速度を調整するだけで、縦方向の軌道が変わり、高さをコントロールできることに気付きました」
ボールの速度を3段階から選び、内角・真ん中・外角の調整は投手の手元のレバーで行う。その組み合わせによって、発射口が1カ所だけでも、9コースの投げ分けができる。そんな仕組みを完成させた。
「手元で左右を調整できるので、『ストライクゾーンぎりぎり』とか『ボール』といった、際どいコースへも投げられます」。ちょっとずつ調整しながら投球を繰り返し、技術を磨いていく。そんな感覚に「共感してもらいたい」という。
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