日本のために「手書きの領収書」をなくすべきこれだけの理由:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
多くの人が日常的に使用している「手書きの領収書」。社会のIT化が進むにつれて、従来の慣習が合理性を失うケースが増えており、こうした手書きの領収書や紙ベースの請求書などは、そろそろ見直す時期に来ている。
現場に悪影響を及ぼしている
だが日本の会社では、従来からの慣習として手書きの領収書を必須にしているところが多い。
恐らく、理由はあまり考えずに従来からの手順を踏襲しているか、領収書やレシートの流用など、社員を信用していない側面が大きいのかもしれない(実際、経費で不正をする社員も多いのかもしれない)。だが、手書きにしたところで不正は発生するので、レシートで管理ができないのかというと、そうはならない。法律上、手書きの領収書が必須でない以上、やはり慣習という部分に強く依存していると考えた方が自然だろう。
わざわざ昔からのやり方を変える必要はないとの声もあるが、現場ではそうはいかなくなっている。飲食店や小売店は慢性的な人手不足となっており、常にギリギリの人数でオペレーションを行う必要がある。領収書の作成はかなりの負荷となっているのだ。
先日、ある飲食店に行ったところ、サラリーマンとおぼしき集団が、個別に会計を行い、全員が手書きの領収書を要求していた(部署が違うのだろう)。
店員は外国人労働者で日本語はそれなりに上手だったが、ネイティブ並みというレベルではなかった。ところが客は、「前株で○○工業」「だから株式会社を先に!」「字が違う!」と詰問口調で何度も書き直しをさせていた。店員は必死になって何枚も領収書を書いていたが、カウンターの前には会計を待つ人の列ができていた。
わずか1000円程度の支出に関して、手書きの領収書を必須にすることが、企業の不正防止や業績にどれほどの効果があるのかは疑問である。レシートであれば、品目も印刷されるので、むしろ不正のチェックに使える側面もある。こうした作業がなければ、日本全体ではどれだけの手間が節約できるのかを考えた場合、マクロ的にも見直しの効果は大きいだろう。
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