あなたも他人事ではない 「ひとり情シス」が意味すること:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
情報システム部門が1人しかいない「ひとり情シス」の会社が増えているようだ。この状況には2通りの解釈ができる。そしてさらに深掘りしていくと……。
以前からIT業界で「ひとり情シス」というキーワードが話題となっている。情報システム部門が1人しかいない組織のことを指しているのだが、これは2通りの解釈ができる。
ひとつはクラウドの進展で情報システム部門が1人でも業務を回せるようになったというプラス面での解釈。もうひとつは、日本の組織が、情報システムは単なるコスト部門という意識から抜け出せていないというマイナス面での解釈である。
中堅企業の3割が情報システム部門1人以下
デルとEMCジャパンが行った中堅企業のIT投資動向調査によると、情報システム担当者が1人以下である「ひとり情シス」、あるいはIT専任担当者がいない「ゼロ情シス」の割合は31%となっており、前年の調査と比較して4ポイント増加したという。
ITシステムが高嶺の花だった時代には、金融機関などごく限られた企業しか大規模なITシステムを運用していなかった。各社はシステム子会社を設立し、大量の社員を採用。いわゆる社内SEと呼ばれる人たちが自社のシステム開発や運用を行ってきた。
しかし90年代に入ってPCが普及し、ITシステムのスリム化が進んだことで状況が大きく変わった。ITベンダー企業側も多くのアウトソーシングメニューを提供するようになり、一部の企業ではIT業務の外注が進められた。
現実問題として、ごく一般的なITシステムを運用するのであれば、社内に専任者を多数配備せずに、業務の多くを外注してしまうのはそれほど難しくはない。例えば、サーバのトラブル対応についても、料金ごとにさまざまなサービスレベルが設定されている。料金は高くなるものの即時対応が必要であればそうしたメニューを選べるし、多少、時間に余裕があるのなら、24時間以内での対応など、割安なメニューを選択すればよい。
最近ではクラウドを使ったサービスが急速に普及しており、システムそのものを保有する必要すらなくなっている。これまでシステムに対して最も積極的な投資を行ってきたメガバンクですら、クラウド移行を進めている時代であることを考えると、「所有」から「利用」へのシフトはさらに進むだろう。情報システム担当者が1人もいない「ゼロ情シス」の割合も上がってくる可能性が高い。
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