資金調達と人材集めが8割 元受付嬢の女性起業家が語る、起業のリアル:ディライテッドCEO 橋本真里子さん(4/4 ページ)
「起業しよう」と思ったときに、どんなことをすればいいかイメージがわくだろうか? 大学卒業後、11年間受付業務を続けたあと、32歳でIT系スタートアップを立ち上げた人物がいる。iPadを使った無人受付システム「RECEPTIONIST」を提供するディライテッドの橋本真里子CEOだ。
女性起業家であること、そして起業で重要だったこと
創業初期において、CEOがやらなくてはならないことは数多い。どんなことにどのくらいの比重をかけて、時間と意識を費やしたのだろうか?
「人材が4割、資金が4割、その他が2割だったと思います。プロダクトも作らなきゃいけないけど資金も集めなければいけない、人も採用しなくてはならない。残りの2割は、私にしかできないこと。いろんなところに行って、サービスを知ってもらう、会社を知ってもらうという、人脈やネットワークづくり。『プロダクトが生まれたら使うよ』とか、『何か困っていることない』とか、社員じゃないけど仲間だという人をいかに集めてくるかを大事にしています」
元受付嬢の女性起業家という点で注目を集める橋本さんだが、女性ならではの苦労はなかったのだろうか?
「たまに聞かれるんですが、女性だから苦労したということは私はなかった。ただ聞く話ですが、女性には投資をしないという投資家さんやVCもいるみたいなので、初期にそういうVCさんに出会っていたら不利だったかもしれません」
一方で、女性の起業家は少ないので、応援の声や仕組みはたくさんあったという。国や都も女性起業家支援のプログラムを用意したり、政策金融公庫が女性起業家むけの融資枠を用意したりしている。
「そもそもエンジェル投資家なんて言葉は昔はなかったし、起業の環境は変わってきていると思います」と橋本さん。
脱サラしてフランチャイズ店のオーナーになるといった一昔前の起業のイメージは、いまや大きく変わってきている。受付から転身して3年、エンジェル投資家というメンターを得ながら実地で学び、資本政策や人材採用方針について話す橋本さんの姿は、気鋭のIT系経営者に感じられた。
最後に、女性のキャリアの考え方について聞いてみた。
「起業はオススメですけど……でもどうだろう? 軸をどこに置きたいかを決められると次の動きを決められると思います。女性でも仕事一本という軸もあるけど、結婚や出産というプラスアルファが乗ってきやすいし、選択肢が広い。軸が定まっていないと、新しいものが乗ってきたときにブレやすくなって、全部が中途半端になる。軸を決めると自分が楽になります」
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