「東大生起業ブーム」の虚実:未来のホリエモンか、単なる“意識高い系”か(1/4 ページ)
東大生の間で起業がブーム。専門サークルも人気だがなぜか大企業への就職が大半。起業自体が目的化している側面もある。
大学発ベンチャーが活況だ。特に数多くの起業家を輩出しているのが東京大学。経済産業省の2016年度の調査によると、確認された大学発ベンチャー1851社のうち東大発は216社と、2位の京都大学(97社)を大きく突き放している。本郷キャンパスの周辺にそうした企業やコワーキングスペースが集積し、「本郷バレー」と呼ばれることもある。
中でも最近、研究者だけでなく東大生が在学中に起業するケースが目立ってきている。工学系研究科の大学院生らが立ち上げたニュースアプリ「グノシー」など、成功事例も出てきている。
欧米に比べまだまだベンチャーが育ちにくいといわれている日本。東大生たちが敷かれたエリートコースから外れて起業を志すことは、社会的にも意義が深い。ただ、ベンチャーは創業5年以内に大半が消えているとすら言われる非常に厳しい世界だ。優秀であっても社会経験の乏しい学生が取り組むことに異論も無いわけではない。
しかも実際にベンチャー志望の東大生たちの話を聞くと、彼らが起業にこだわるちょっと意外な理由が見えてきた。取材を進めていく中で、起業サークルの卒業生の多くが大企業に就職している実態も判明。彼らは未来のホリエモンか、それとも単に流行に乗ってしまった「意識高い系」なのか。東大生起業ブームの虚実を追った。
東大生全体では大手人気、でも……
実は、東大生全体でみるとまだまだ従来の大企業志向は消えていない。長年東大生の就職動向を調査してきた週刊の学生新聞、公益財団法人・東京大学新聞社(東京・文京)のまとめた17年度の学部4年生の就職先ランキングによると、学部卒業者の1位は三菱UFJ銀行。2位のアクセンチュア、3位の三井住友銀、4位のみずほフィナンシャルグループと、銀行を中心に大手有名企業が続く。
同社編集長で東大教養学部2年の小田泰成さんは「銀行など大企業人気は以前から変わらない」と分析する一方で「ここ数年、学内では確かに起業ブームが起きている」と話す。同社でも数多くの東大生起業家にインタビューしている。
ベンチャー投資を長年手掛けてきたオプトベンチャーズ(東京・千代田)のパートナー、日野太樹さんも「ここ数年、東大生の起業家から投資の相談を受けることが増えた。他大と比べても一番多い」と指摘する。日野さんによると、特に流行のAI(人工知能)など理系学生の起業が目立つという。「周囲に成功している先輩が既にたくさんいるからでは」とみる。
学部3年の加茂倫明さんも実際に起業した東大生の1人だ。灘高校出身で理科2類に入学後、16年に人材系サービスを手掛けるPOL(東京・中央)を立ち上げた。工学部に進学したものの現在は休学中という。
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