あなたの地元はまだ生き残れるのか?:あんなに活気があったのに……(1/2 ページ)
「自分の地元がヤバい……!」。そう思っている人は多いのでは? 想像以上に日本の地域の衰退は進んでいるのだ。そのような問題意識を持つ人におススメしたい本を紹介する。
2018年も残すところわずか。この記事を読んでいる皆さんの中で、年末年始に故郷に帰省するという方は多いはずだ。
皆さんの地元は今、どんな状況だろうか? 自分が暮らしていたころと比べて、町に活気はあるだろうか? 恐らく大半の人は「昔はあんなににぎわいがあったのに……」という印象を持っているのでは。少子高齢化、景気低迷……。さまざまな原因から皆さんの肌感覚以上に地方は衰退しているのだ。
今回ご紹介する書籍「地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」(ダイヤモンド社)は、まさに皆さんが感じているような地方の町のリアルに言及した1冊である。
小説仕立ての本書は、東京でサラリーマン生活を送る主人公が、ある日、母親から実家の稼業について相談を受けたところから物語がスタートする。舞台となっているのは、東京から新幹線で約1時間、さらに在来線で20分ほどのところにある町だ。架空の設定ではあるものの、全国どこにでもありそうな地域の実態を表している。
内閣府 地域活性化伝道師として活動する著者の木下斉氏は、地方創生、地域活性化といった分野では有名人。さまざまなメディアで連載を持ち、多数の書籍を執筆するかたわら、自らの足で全国あるいは海外を回り、多くの地域プロジェクトを指導している。木下氏のポリシーは「事業の視点を持つこと」。そこで単なる提言にとどまらず、自らが地域の経営や事業開発にかかわったり、投資をしたりして、ビジネスにコミットしている。高校生のころ、早稲田商店会の活動に参画したのをきかっけに、全国商店街協同出資会社・商店街ネットワーク取締役社長を務めて以来、その道20年の「地域再生のプロ」である。
地方では国や自治体の補助金をかすめ取るだけの怪しげなコンサルタントやアドバイザーがはびこるが、筆者は名実ともにそうした人たちと一線を画す。本書の帯にもあるように、「補助金こそが地方のガン」であると木下氏は常々主張している。
本書は、主人公がゼロから地域再生にかかわり、さまざまな困難や落とし穴を乗り越えながら、事業を成長させていく姿を描いている。小説のストーリーそのものの面白さに加えて、欄外の解説や章ごとのコラムが充実しているのが特徴である。著者もそこを押している。
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