「24時間戦えますか?」から30年 平成の日本から“ブラック企業”は減ったのか:苦戦する電通、ホワイト化するワタミ(4/5 ページ)
平成初期に「リゲイン」のキャッチフレーズ「24時間戦えますか?」が流行してから、約30年がたった。だが現在も、長時間労働が常態化している“ブラック企業”に苦しめられる労働者が後を絶たない。この30年間で、日本企業の労働環境は本当に改善されたのか。“ブラック企業アナリスト”こと新田龍さんに意見を聞いた。
電通の働き方は変わったのか
――さて、新田さんが「日本のビジネス界を変えた出来事」と評した電通事件が起きてから3年がたちましたが、電通の働き方はどう変わっているのでしょうか。
新田: 私が得ている情報では、電通の「働き方改革」は、部署によって全然受け止め方や進み方が違うとのことです。現在の電通では、午後10時に全館を消灯し、長時間労働を抑制する取り組みを進めていますが、官公庁を相手にしている部署は、もともと深夜や翌朝まで残業するケースがまれだったので、あまり変化はないようです。
一方、テレビCMなど大口の広告主を抱えている部署では、クライアントが「明日までにこれをやってほしい」などと夜に連絡してくるケースが依然としてあり、社員は残業をさせたくない経営層と、早く成果物を提出してほしいクライアントとの間で板挟みになり、かなり苦労しているようです。
先ほど紹介したサイボウズやSCSKとは異なり、電通が古くからのクライアントとの付き合い方を変えるのはなかなか難しく、多少理不尽な依頼でも受けてしまう文化は依然として残っているようです。これも、顧客を“神様”だと捉える文化が根強く残っている日本社会の問題点だといえます。
ワタミがホワイト化していた!?
――電通は根本的な改善に苦労しているとのことですが、これまでに「ブラックだ」と評されていた企業の中で、体制を大きく改善できた例はあるのですか。
新田: 意外かもしれませんが、ワタミはホワイト化しつつあります。確かにかつての労働環境や給与体系は悪かったですが、現在は従業員の待遇改善に取り組んでおり、業績がアップした場合にインセンティブ賞与を給付する制度を整備。14年度現在で、平均年収は従来比約50万円増の469万円にアップしています。16年は社内に労働組合を発足させ、ベースアップなども実施しています。
また、休業日を導入したり、午前5時までが一般的だった営業時間を前倒ししたり、店長が1人で2店舗を担当するケースを減らしたりと、長時間労働の防止策も導入しています。顧客に呼ばれると、店員が必ず席まで行き、片膝をついて注文を取るという丁寧すぎるサービスも廃止し、タブレットで注文を取れるように変更。かつては入社から1年で半数が辞めていましたが、現在は1年以内に辞める人はゼロ。17年度現在で、月45時間以上残業する社員は1割程度に抑えられています。19年1月からは、勤務間インターバル制度をパート・アルバイト含めて全従業員に導入する予定とのことです。
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