2018年に乗ったクルマ トヨタの「責任」とスズキの「義務」:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
この1年間に試乗したクルマで、特筆すべきクルマが6台ある。今回はトヨタのクラウン、カローラ・スポーツと、スズキのジムニーについて言及する。
スズキ・ジムニー
筆者が今年の1台に挙げる必要もないほど注目を集めたモデルである。
新型ジムニーがどういうものかと言えば、従来のジムニーに求められる性能を維持しつつ、弱点を補った改良版だと思っていいだろう。具体的に言えば、高速巡航時のエンジン騒音の軽減。高速道路で減速して前荷重がかかった時の進路の安定性向上。内外装のグレードアップ。燃費の向上。電子制御による運転アシスト系装備の充実といったところだ。旧型で我慢を強いられていた部分がだいぶ改善された。
ただし、それでジムニーの素性の良い部分が変わってしまっては意味がない。新型ジムニーが真に素晴らしいのは、失ってはいけないものを何ひとつ失っていないことだ。こんなことは珍しい。素晴らしかったクルマがモデルチェンジで堕落していくのはよく見る光景で、クルマの出来は世代ごとに波があるものだ。しかしジムニーは外さない。
ステアリングもアクセルもブレーキも、ドライバーの望む操作をしっかり受け付ける。それはものすごい加速をするとか、旋回性能がすごいという話ではない。ちょっとオーディオ機器を思い出してほしい。あとほんのちょっとだけボリュームを上げたいだけなのに、いきなりものすごく大きな音になってしまったり、逆にちょっと小さくしたいだけなのに、一気に聞こえなくなってしまったりという神経質なボリューム調整に出くわしたことがあるはずだ。
ダメなクルマというのは、前のクルマとの車間距離の調整のために、ほんの時速1キロほど加速したいという操作を精度良く受け止めてくれない。踏んでも加速しなかったり、踏むとギュンと加速してしまったり。スロットルレスポンスやブレーキのフィールは本当はそういう場面でこそ大事なのであって、全開加速やフル制動の時はレスポンスなんてほどほどで十分なのだ。
ジムニーというクルマの最も魅力的なポイントは、そういうドライバーの微細な操作を、高精度で受け止めてくれるところにある。だからジムニーは運転している間中、安心できるし、いつでも手の内に収まっている感覚が強い。新型ジムニーは歴代ジムニー同様、傑作車と言えるだろう。
参照記事:ジムニー 評判通りの楽しさ
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