見違えるほどのクラウン、吠える豊田章男自工会会長:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)
2018年の「週刊モータージャーナル」の記事本数は62本。アクセスランキングトップ10になったのは何か? さらにトップ3を抜粋して解説を加える。
豊田章男自工会新会長吠える!
18年5月、自工会会長にトヨタ自動車の豊田章男社長が2度目の就任をした。通例では自工会の会長は1期限りで2度目はない。日産自動車の西川廣人社長が完成検査問題で中途辞任したための緊急登板だった。
就任以来、豊田会長は「自動車諸税の軽減」を繰り返し訴えた。国際的に見て、日本の自動車諸税は総額が高額すぎ、9種にも及ぶ課税項目は複雑すぎる。例えば保有税は、米国の31倍、英国の2.4倍、ドイツの2.8倍、フランスは保有税がないので倍率の出しようがない。
さらに問題を複雑化させているのは、税根拠の矛盾である。例えば、自動車取得税と自動車重量税は「受益者負担」の原則の下、道路や鉄道網の整備財源として創設されたにもかかわらず、09年にこれを一般財源化し、受益者と関係ない何にでも使える税へと組み替えられた。
日本の年間予算約100兆円のうち、税収は約60兆円。そのうち8.4兆円が自動車関連税でまかなわれている。ちなみに19年度予算案を支出のトップ2を見ると、年金と医療費が31.5兆円、地方交付税交付金が15.5兆円の合わせて47兆円。つまり自動車取得税と自動車重量税は、その使途の約半分が年金、医療費、地方交付金に流用されている。それを自動車ユーザーが負担すべき理由は誰にも説明できないだろう。
このほかにも旧物品税からの移行となる自動車取得税は、旧物品税から移行された消費税と課税根拠が同じだ。つまり両方課税されるなら二重課税である。あるいはガソリンに関しては揮発油税を分離せず、本体価格と併せて税に消費税が課税されるという二階建ての種類の二重課税も発生している。
こうした問題をこのまま放置できないというのが自工会の主張であり、この豊田会長の強い働きかけもあってようやくおおよそ1000億円の減税が検討されることになった。ちなみに今回検討されている自動車取得税はエコカー減税実施前の徴収額で約4500億円あった。これが1000億程度減税される方向で調整中だ。
実現すれば自動車関連諸税に対する恒久減税は初めてのことで、大きな一歩ではあるが、自動車関連税全体として8.4兆円の内1000億円はやはり物足りない。
諸外国の課税レベルはおおむね軽自動車に近い。本来であれば軽自動車に税額をそろえるべきなのだ。
さて、19年は年明けから日米ともに株価の大暴落の洗礼を受けて始まった。リーマンショック以来、世界経済をけん引してきた中国経済の減速感も大きい。波乱の1年になる可能性も高いが、わが国の基幹産業である自動車業界の行方をしっかりと見守っていきたい。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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