えっ、盗まれないの? 無人の古本屋は、なぜ営業を続けられるのか:水曜インタビュー劇場(2坪公演)(4/6 ページ)
東京の三鷹駅から徒歩15分ほどのところに、無人の古本屋がある。広さ2坪のところに、500冊ほどの本が並んでいるだけ。「誰もいなかったら、本が盗まれるのでは?」と思われたかもしれないが、実際はどうなのか。オーナーに話を聞いたところ……。
本を盗まれない仕組み
土肥: オープン当初、お客さんの反応はどうだったのでしょうか?
中西: めちゃめちゃ売れたんですよね。さまざまな書店に足を運ぶ人がすぐに見つけくれて、ネット上で紹介してくれました。それを読んだ人たちが店に来てくれて、すべり出しは順調でした。
当初、会社に出勤する前に店を開けて、家に戻る前に店を閉める――といった形で運営していました。ただ、これを続けるのは「正直しんどいな」と感じていました。オープンした年の暮、帰省することになったのですが、「店を開けたままでもいいのではないか。年末年始は店を閉めるところが多いので、本が売れるかもしれない」と考え、カギを閉めないことに。特に問題が起きなかったので、その後も365日24時間営業を続けることにしました。
土肥: ただ深夜も店を開け続けるとなると、本が盗まれるリスクが高まるのではないでしょうか?
中西: いえ、そんなことはありません。なぜか。BOOK ROADは実店舗になりますが、Webサービスのように考えているんですよね。この店に入ったお客さんは、どのようにとらえるのだろうかと。商店街の一角にあって、店舗の前にはクリーニング店がある。地元の人しか歩いていない。このような立地条件を考えると、本を盗むような人は来店しないのではないかと考えました。
あと、店の看板を掲げていません。なぜ分かりにくくしているのかというと、古本に興味をもった人に来てもらいたいから。本が好きな人、いい人に来てもらいたい思っているので、看板はいらないのかなあと。宣伝をして、本の価格を半額にして……といったことをすると、たくさんのお客さんが来店するかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが、この店は無人販売なので、いい人に来てもらいたい。看板を掲げないことで、本当に興味を持ってくれるような人しか利用しないお店になるようフィルターをかけているんですよね。
そうはいっても、ひょっとしたら本を盗む人がいるかもしれない。オープン当初、店の裏側に隠れて、お客さんの声を聞いていました(苦笑)。その声を聞いて、安心したんですよね。ほとんどのお客さんは「この店、何かな?」「カプセルトイが置いている。これで支払うんだ」などと言っていました。「無人だったら本を取り放題じゃないか」という人もいたのですが、その一方で「取ったらダメじゃん」という人もいる。こうした会話を聞いていて、「無人の古本屋をやっていけるかな」と感じました。
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