月の裏側着陸は人類初! グイグイ加速する中国の宇宙戦略:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
新年早々のビッグニュースだ。1月3日、中国の無人探査機が人類史上初めて月の裏側に着陸成功した。今回は、躍進する中国の国家宇宙開発、急増する宇宙ベンチャーの動向を紹介したい。
打ち上げ回数では既に世界ナンバーワン
有人宇宙飛行では既に11人の宇宙飛行士と、2つの実験室を宇宙に送り込んでいる。今後は独自の宇宙ステーション「天宮」を建設し、22年からの運用を目指している。独自の全地球測位システムである「北斗」の基本システムは既に完成、20年には計35機体制に拡張予定だ。政府の「一帯一路」計画に関連して沿線国家に測位サービス提供を進めている。
またロケット開発・運用も重点分野だ。中核をなすのが長征(Long March)ロケットであり、過去に300回近い打ち上げ実績を誇る。18年は米国でSpaceXが21回の打ち上げに成功して、民間企業による年間の商業打ち上げ回数の世界記録を作った。しかしながら、国単位では中国が18年に39回の打ち上げに成功し、米国をしのいで年間打ち上げ回数の世界1位になったのだ。
さらには独自の衛星インターネット網の構築など多種多様なプログラムが同時に動いている。こうした活動を担っているのが政府系機関であるCNSA(国家船天局)、CAS(中国科学院)、安全保障機関、さらには国営企業であるCASC(中国航天科技集団有限公司)、CASIC(中国航天科工集団有限公司)だ。
80を超える宇宙ベンチャーが存在
このように国家機関と国営企業による大規模宇宙開発プログラムが脚光を浴びる中国であるが、実は民間主体の宇宙ベンチャーの数も急増している。呼応する形で17年は中国で初めて商業宇宙カンファレンスが開催された。分岐点となったのが14年に宇宙産業(特に商業打ち上げサービスと観測衛星)に、民間資本を流入させる方針を政府が発表したことだ。
米国におけるイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのように、IT業界で成功したビリオネアが自ら資産を投じて宇宙ベンチャーを立ち上げる形での起業はまだ例を見ない。ただし、米Wall Street Journalによると、中国の宇宙ベンチャーの数は80以上と報道されている。また、北京に拠点を構えるFuture Aerospaceによる60以上の民間企業が宇宙ビジネスに取り組んでいるという。
宇宙ベンチャーの定義によって数にばらつきはあるものの、日本の宇宙ベンチャーの数は18年末時点で約30であることを考えると(一般社団法人SPACETIDE調べ)、既に日本の倍以上はプレイヤーが存在するとも言える。
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