アメコミの巨匠スタン・リー 知られざる「日本アニメに見いだした夢」:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(4/6 ページ)
2018年に亡くなったアメコミの巨匠スタン・リー。実は晩年、日本のアニメ・マンガを積極的に手掛けていた。異国のコンテンツビジネスに見いだした夢とは。
「HEROMAN」の主人公はなぜ中性的なのか
スタン・リー最後のオリジナルヒーローが日本アニメであったのは、ある意味必然だった。米国ではマーベル、DCの大手2社がコミック出版で大きな力を持ち、ハリウッド映画はこの2つと結び付くことで大ヒットを生み出してきた。スタン・リーは最後までマーベルでの肩書を持っていたが、現場からは離れていた。たとえスタン・リーほどの大物でも、大手2社の支配構造はなかなか突き崩せない。
そこで自身の作品世界を実現するために取ったのが、日本のアニメーション制作会社や出版社と手を組むやり方だ。日本には米国と異なる制作のシステムがあった。実際、「HEROMAN」と「ザ・リフレクション」は両方とも、当初POW!Entertainment側から日本側にアプローチがあったという。
これに気づいたときに、「HEROMAN」に対する長い間の疑問の一つが解けた気がした。それは「HEROMAN」の主人公ジョーイの容姿である。長髪できゃしゃ、少女といってもいい。当初から米国市場を狙った作品であれば、もっとマッチョなほうが共感を得られると思っていたのだ。なぜスタン・リーがそのキャラクターを認めたのかと。
むしろこれはスタン・リーが作品に深く関わった結果だったのだろう。かつてスタン・リーはマッチョな青年ばかりのアメコミの世界に、普通の学生であるピーター・パーカーをヒーローとした「スパイダーマン」で革命を起こし、大ヒットさせた。「ファンタスティック・フォー」もそうだ。悩める主人公たちを描くことでヒーローたちにリアリティーを与えた。
スタン・リーは「HEROMAN」でもう一つの「スパイダーマン」を描きたかったのかもしれない。きゃしゃな主人公がロボットの「ヒーローマン」を拾うことで強大な力を手に入れる。それは日本アニメを使ったスタン・リーの再挑戦、リベンジだったのかもしれない。
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