ゴーン妻の“人質司法”批判を「ざまあみろ」と笑っていられない理由:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の逮捕・勾留に関して、キャロル夫人がいわゆる「人質司法」を批判した書簡を人権団体に送った。刑事司法制度において「自白偏重主義」を貫いてきた日本は、海外からどんな国であると認識されているのか。
日産自動車の前会長であるカルロス・ゴーン被告が逮捕されてから2カ月ほどになる。
長期の勾留が続く中、キャロル夫人が国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)に、9ページにわたる書簡を送ったことが明らかになった。夫人は書簡で、「日本の刑事司法制度がゴーンに課している厳しい扱いと、人権に関わる不平等さを白日の下にさらす」ことをHRWに求めている。
時を同じくして、HRWアジア局長のブラッド・アダムスは国際情勢サイトのディプロマットに、ゴーンに対する人権侵害について寄稿し、「ゴーンは保釈を却下され、取り調べ中に弁護士を伴うことは許されず、逮捕以降は家族と会うことも許されていない」と主張。さらに、「ゴーンに対する深刻な嫌疑や、彼の日産時代に絡んだ論争があろうとも、刑事告訴に直面している人は誰しも、このような形で権利を奪われるべきではない」と指摘した。
またキャロル夫人の書簡にはこんな記述もあるという。「毎日何時間も、検察官は弁護士が立ち会わない中で、なんとか自供を引き出すために、彼を取り調べし、脅し、説教し、叱責(しっせき)している」
夫人は、いわゆる「人質司法」を批判し、まだ有罪になっていないゴーンがあまりに不当に扱われていると言いたいのである。さらに今後、別件の逮捕などによって当局はいつまででも勾留を続けることができ、自供するまで延々と密室での取り調べが続くことになる。
この書簡のニュースを受けて、ネットニュースには早速、否定的なコメントがあふれていた。筆者は決して人権意識の高い運動家ではないし、欧米の価値観を無条件に礼賛するつもりもない。ただゴーンのケースでは、キャロル夫人やHRWの言い分にも一理あるのではないかと感じている。
今回の事件では、ゴーンの怪しいカネの動きや、日産とルノーのビジネスにおける力関係、国策捜査の指摘などいろいろな情報が飛び交っている。だがそうした話はいったん脇に置いて、日本の刑事司法制度が外国からどう認識されているのかに焦点を当ててみたい。
関連記事
- ファーウェイのスマホは“危険”なのか 「5G」到来で増す中国の脅威
米国が中国・ファーウェイの通信機器を使わないように友好国に要請していると報じられた。なぜファーウェイを排除しようとするのか。本当に「危険」なのか。その背景には、次世代移動通信「5G」時代到来によって増大する、中国の脅威があった。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - 「原爆Tシャツ」「ナチス帽」で苦境のBTS 全米1位の裏にある“異常”な実態
韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」が「原爆Tシャツ」などの騒動を巻き起こしている。全米ヒットチャート1位にも輝いたこのグループの実態を探ってみると、興味深いことが見えてきた。 - シリアから解放の安田氏に問われる、ジャーナリストとしての“2つの姿勢”
シリアで武装組織に拘束されていた日本人ジャーナリストが解放された。世界的なベテランジャーナリストに見解を聞くと、ジャーナリストとしての「姿勢」について指摘していた。安田氏に欠けていた姿勢とは? - 「才能ある貧乏」と「無能な金持ち」はどちらが成功する? 浮かび上がった不都合な事実
遺伝子から子供の才能を調査し、育つ家庭の裕福度によって学歴がどう変わるかを明らかにした研究が話題になっている。「才能」と「環境」のどちらが将来を決めるのか。その結果から、現代社会の問題も浮き彫りになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.