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公共交通が示す「ドアtoドア」の未来 鉄道はMaaSの軸になれるのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
先進交通の分野で「MaaS」という言葉が話題になっている。自動車業界で語られることが多いが、鉄道とも深い関係がある。「利用者主体の移動サービス」の実現のために、鉄道こそ重要な基軸になるからだ。「ドアtoドア」のサービスを提供するために、鉄道はどうあるべきか。
2018年、日本の先進交通分野で頻出した言葉が「MaaS(Mobility as a Service)」だ。報道などを追うと、シェアカーや自動運転など、自動車業界で語られることが多かった。しかし鉄道とも無関係ではない。むしろ鉄道が重要な基軸になると考えられる。
JR東日本は「MaaS」という言葉を使わなかった
16年11月、JR東日本は「技術革新中長期ビジョン」を策定した。ここでは第一に「安全・安心」を掲げており、さすがと思わせるけれども、2番目に挙げられた項目が「サービス&マーケティング」で、次のように記されている。
バス・タクシーなどの他交通機関、自動運転技術やシェアリングの進展が著しい自動車、気象情報等のさまざまなデータを、リアルタイムで連携することが可能になると考えています。(中略)お客さまにとって“Now 今だけ, Here ここだけ, Me 私だけ”の価値の提供をめざします。(中略)臨機応変な列車運行や、二次交通との高度な連携など、スムーズにDoor to Doorの移動ができるモビリティサービスの提供をめざします。(出典:「技術革新中長期ビジョン」の策定)
この文書には「MaaS」という単語は出てこない。しかしこれこそがMaaSの概念だ。
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