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公共交通が示す「ドアtoドア」の未来 鉄道はMaaSの軸になれるのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

先進交通の分野で「MaaS」という言葉が話題になっている。自動車業界で語られることが多いが、鉄道とも深い関係がある。「利用者主体の移動サービス」の実現のために、鉄道こそ重要な基軸になるからだ。「ドアtoドア」のサービスを提供するために、鉄道はどうあるべきか。

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 さて、MaaSによって最適な移動手段をアプリ(クラウドシステム)が選んでくれる時代に、鉄道はどんな存在でなくてはいけないか。アプリが利用者に示した経路から、鉄道を含むルートを選んでもらうためにはどうしたら良いか。鉄道事業者はいま、ここに取り組んでいる。他の交通手段より速度が速かったり、安価であったり、乗り換えの負担が小さかったり、着席が保証されたりするなどのメリットが必要だ。さらに付加価値としてスマホに充電できたり、Wi-Fiがあったりという機能も必要になるだろう。

 さらに突き詰めれば、他の交通機関より「楽しく過ごせるか」という付加価値も重要だ。景色が良いとか、飲食設備があるとか、夜間に眠ったまま安心して移動できるとか。

 マイカーだけではなく、大きな移動手段の中で競争が始まる。その中で鉄道を選んでもらうために、鉄道会社がどんな取り組みをしているか。その動向を理解するためには、各社がMaaSにおけるサービスの理想をどこに置いているかに注目だ。いや、鉄道会社が積極的に示すべきだ。それが自社の沿線の価値を高めることにつながっていき、沿線人口を増やし、鉄道路線の利益になる。

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東急電鉄は「郊外型MaaS実証実験」を1月下旬から約2カ月間実施予定(出典:東急電鉄ニュースリリース「東急線沿線で、日本初の『郊外型 MaaS 実証実験』を実施」)
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東急の郊外型MaaSは田園都市線の中核「たまプラーザ駅」周辺で実施(出典:東急電鉄ニュースリリース「東急線沿線で、日本初の『郊外型 MaaS 実証実験』を実施」)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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