改正入管法で浮き彫りに 日本語学校の“知られざる”役割:「労働者」の前に「留学生」を(3/6 ページ)
2019年4月1日に「改正出入国管理法」が施行される。これによって存続の危機に直面する業界がある。日本語学校だ。そもそも多くの日本人にとって、日本語学校が持つ役割を知る人は少ないという……。
ベトナム人留学生の現実
筆者が非常勤の日本語教師として活動していた3年前の教え子たちの中には、日本語学校の後に進んだ専門学校を卒業し、日本国内で働き始める学生が多くいる。ここ数カ月の間で、就職先が決まったという報告や、推薦状を書いてほしいと久しぶりに連絡をくれる子も少なくない。
ボーテー・ジュエットさん(28)も、教え子の1人だ。
自国ベトナムにある自動車関連の大学を卒業後、2013年に来日したジュエットさんは、都内の日本語学校に約2年間在籍。遅刻欠席もほとんどすることなく真面目に授業に取り組み、日本語や日本の風習を着実に習得した。その結果、他の学生よりも早く日本企業に就職。自信と知識を身に付けた後、より専門性が求められる企業への転職も果たした。現在の職場には、外国人は彼しかいないという。
自身が日本企業に就職・転職できた要因は何だったか分析してもらったところ、「日本の習慣や文化的差異に対する深い理解があったから」だと即答する。
「日本語学校時代に習得した言葉や文化は、その後、日本社会でうまくやっていく上で大変重要なことばかりでした。日本で働けば、少なからず日本人と働くことになる。彼らは日本語学校の先生方とは違い、分かりやすい言葉を選んで話してはくれませんし、職場の年齢層によっては、曖昧(あいまい)な表現や流行語、略語などが飛び交う。こういう言葉は、自国で身に付けるのには限界があり、ある程度日本で生活をしないと理解できません。
来日してすぐに現場で働くのではなく、『慣れる時間』として少しの間でも日本語学校に通えば、こうした言葉だけでなく、日常生活で抱いた疑問や悩みを翌日すぐに先生に相談し、解決できる。我々外国人が、日本の水準にあった労働者として活躍するならば、互い(日本人・外国人)のためにも、やはりその前に学生として生活する時間が必要だと思います」
関連記事
- 小さな段ボール工場が変えた避難所の光景
大阪府八尾市の一角にある小さな町工場のJパックス株式会社。作っているのは、段ボールだ。この会社が被災地の避難所の光景を変えようとしている。 - 残っても地獄、辞めても地獄……多くの日本人が悩む働き方の現実
「会社を辞めるべきか、このまま続けるべきか」。そんな悩みを持つサラリーマンは多いだろう。筆者も相談をよく受けるという。しかしながら、日本の場合は「残っても地獄、辞めても地獄」ということが多々あるので、よほどの強い覚悟が必要なのだ。 - 日本企業で外国人留学生の採用が進まない真の理由
日本企業で外国人留学生の採用が進んでいない。日本独特の就活の慣習に外国人がなじめないほか、企業も高い日本語能力を求めたりネガティブなイメージを持つのが原因。 - 同性愛公表のパナソニック取締役ベイツ氏「LGBTへの差別は日本経済の損失」
6月にパナソニック初の外国人取締役に就任した米国人のローレンス・ベイツ氏が、同性愛者であることをカミングアウト(公表)している自身の経験について、就任後初めて取材に応じた。 - 外国人労働者受け入れ法案が招く、本当の姿
政府与党と維新の会の賛成で衆院可決し、法の成立が固まった出入国管理法(入管法)改正案。日本の将来像に重大な影響を与える法案ですが、移民が始まるとどんな事態が起こり得るのでしょうか。現実的な想像をしてみたいと思います。 - ニッポンの職場が激変? 年収大幅減、下請けに丸投げなどの懸念も
2019年4月に働き方改革関連法が施行される予定だ。しかし、対応が十分にできている企業は少ない。今の状態で法律が施行されると、年収の大幅減や中小企業におけるサービス残業の横行、生産の縮小などの悪影響が懸念される……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.