改正入管法で浮き彫りに 日本語学校の“知られざる”役割:「労働者」の前に「留学生」を(5/6 ページ)
2019年4月1日に「改正出入国管理法」が施行される。これによって存続の危機に直面する業界がある。日本語学校だ。そもそも多くの日本人にとって、日本語学校が持つ役割を知る人は少ないという……。
そして、もう1つのタイプは、そもそもの目的が留学ではない「出稼ぎ留学生」だ。
学生ビザというのは、どの国においても比較的取得しやすい。そのため、彼らはこのビザを来日手段として取得し、学校に数回顔を出すと、そのまま失踪してひたすら労働に勤しむ。無論、定められた週28時間の就労時間も守る気など毛頭ない。
そんな彼らの中には、「稼げる」という甘いうたい文句に釣られ、「先輩留学生」に導かれるままに過酷な不法労働の現場に駆り出されるケースや、場合によっては犯罪組織に身を置かざるを得なくなることもある。日本の生活に不慣れな上、知り合いの日本人もいない彼らは、こうした周囲の「先輩外国人」のネットワークからなかなか逃れられないのだ。
日本語学校は、彼らの日常生活を見守る「駆け込み屋」のような存在にもなっているのだが、学校に来ないことにはその機能も無意味と化す。実際、同じように日本語学校に属さず日本社会で働く「技能実習生」にも似たような事象が発生しており、一時大きく報じられたように、追い込まれた外国人労働者には自殺を図る人も少なくない。
長井卓也氏。Coto Japanese Academy職員。大学卒業後、予備校講師を経た後、大学在学中のカナダ短期留学経験を生かし2004年日本語教師へ転身。現在までに58カ国2500人以上の留学生をマネジメント
長年、日本語学校の教務主任や校長として現場第一主義を貫き、多くの留学生と対峙してきた、日本語教師の長井卓也氏は、こうした不法滞在・労働者量産の実態についてこう話す。
「失踪して数年経った元学生の名前を思わぬ形で聞くことがあるんです。『〇〇という学生はあなたの学校の学生ですか』という電話。警察に彼らが逮捕されるとかかってきます。日本語学校を運営する以上、どうしてもこうした学生の失踪は避けられない。政府が留学生30万人計画を掲げ、ビザを緩和して以降、その数は大幅に増えています。それでも優良校の認定を受けている老舗の日本語学校は、その数を何とかして既定の範囲内に抑えていますが、ブームに乗って創られた比較的新しい学校の一部には、こうした出稼ぎ目的の学生の来日を斡旋する業者と手を組んだり、2020年の東京オリンピックに向けて、学校の名前に『××建設株式会社』と付けてカモフラージュしたりする悪質なところも少なくありません」
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