おまめのフジッコ「カスピ海ヨーグルト」の成長が止まらない理由:ねばり勝ち(3/4 ページ)
フジッコの「カスピ海ヨーグルト」が成長を続けている。2005年の発売以降、右肩上がりに売り上げを伸ばし続けているのはなぜだろうか。マーケティング推進室室長の紀井孝之さんに、“ねばり勝つ”戦略について聞いた。
持ちやすく感じるためには、手にフィットしていればいいのではないか。その発想から行き着いた考えが、「くぼみを付ける」こと。女性の手のサイズの平均を調べ、カップを持ったときに指先が当たる2カ所にくぼみを入れた。そうすることで、女性の手でも軽い力でしっかりとつかむことができるようになる。さらに、ぴったりとふたを閉じられるように、開け口の形状なども調整した。
だが、複雑な形をしていると、ヨーグルトをかき出すときにスプーンが引っ掛かってきれいに取り出せない。中の形状はできるだけ丸に近づけるように、ぎりぎりまで調整したという。
パッケージデザインも一新した。従来は「北海道生乳100%」と言葉が目立つように大きく書かれていた。それが、他の商品と差別化できる要素の一つだからだ。しかし、あらためて「商品の何がお客さまの心に響いているか」を調べると、「そこまで大きな要素ではなかった」。それよりも「粘り」だ。最大の特長であるのに、それがパッケージでほとんど表現されていなかった。もっと前面に押し出すために「ねばりのチカラ」というフレーズを入れ、強い粘りが視覚的に分かるデザインを取り入れた。
「ねばり戦略」を打ち出す
パッケージに象徴されるように、「粘り」を商品価値として大きく打ち出すことも新たに始めた。従来は、「酸味が少なくて食べやすいとか、ジョージアの長寿の秘密とか、さまざまな要素を打ち出していた」。「粘り」にフォーカスすることで、ブランドイメージを定着させようと考えたのだ。
社内では、「打ち出すべきなのは『おいしさ』やないんか?」と言われることもあった。しかし、それは他のヨーグルトにもある要素。粘りこそが他との差別化だと訴え続けた。
粘りに対するイメージも活用できると考えた。「日本人は納豆など、粘る食材に健康的なイメージがありますし、粘り強さという精神性も好んでいます」。キャンペーンでは、粘り強さが必要になる「受験」「スポーツ」の応援を打ち出した。3年前からは、受験生の応援として「だるま」などをあしらった期間限定パッケージも販売。「まずは情緒的に価値を伝えていくことで、親しんでもらいたい」
それに加えて、店頭での食べ方提案として「ゆずはちみつソース」や「ドライフルーツミックス」などを添付するキャンペーンなども実施した。「大手がやらないことをやる。得意なところを見つけて、それに特化することで差をつける」ということを大事にしている。
関連記事
- 市場低迷なのに……お豆のフジッコのゼリーはなぜ売れる?
豆や昆布でおなじみの食品メーカー、フジッコが新たな事業領域の開拓に力を入れている。同社が15年前に発売したゼリー商品「フルーツセラピー」は後発ながらも売り上げを伸ばし、ゼリーブランド別では競合を追い抜いたという。同社の商品はなぜ売れているのだろうか……? - 「粘りが不足」 フジッコ、「カスピ海ヨーグルト」一部商品の生産を一時休止
フジッコが11月2日、「カスピ海ヨーグルト」シリーズ2商品の生産を一時休止。特徴の「粘り」が不足する事象が起きているという。 - 「1本3000円」のシャープペンをヒット商品にした、“近寄りがたさ”
ぺんてるが2017年に発売した高級シャープペンシル「オレンズネロ」。1本3000円という価格でも、幅広い層に受け入れられ、ヒット商品になった。何が多くの人の心をつかんだのか。企画担当者の取り組みに迫った。 - 1250円の「カレー専用スプーン」は、どうやって開発したのか
カレーライスを食べる時、スプーンにこだわる人は多くないだろう。出されたものを使うか、無意識に選んだものを使っているはずである。しかし世の中には、カレー専用につくられたスプーンがある。その中でも現在、注目を集めているのが、「カレー賢人」だ。 - ごみの“迫力”でお酒が進む? 美術館みたいな「ごみ処理施設」で大人の社会見学
「ごみ処理の様子を見ながらお酒を飲む」というイベントが話題になっている。なぜお酒を飲むイベントなのか。ごみ処理施設でどんなものを見られるのか。開催初日に、東京都武蔵野市の武蔵野クリーンセンターを訪れた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.