恵方巻があっという間に豚の飼料へ 食品廃棄とリサイクルの現場を歩く:首都圏の工場を取材(1/5 ページ)
食品廃棄の観点から恵方巻のイベントが批判されている。首都圏のある工場では廃棄された恵方巻が豚の飼料になっていた。どのような仕組みになっているのだろうか。
「農水省が需要に見合う恵方巻の販売を業界団体に呼び掛け」「売れ残って廃棄される恵方巻は10億円分」といったニュースを目にした読者もいるのでは。廃棄された恵方巻は焼却処分されるだけでなく、豚の飼料としてリサイクルされることもあるという。一体、どのような仕組みになっているのだろうか。
そこで、食品工場やスーパーで廃棄された恵方巻が運び込まれる食品リサイクル工場を取材した。
廃棄された恵方巻とキュウリ
「これはおそらく、恵方巻用のキュウリですね」
食品リサイクル事業を手掛ける日本フードエコロジーセンター(神奈川県相模原市)の高橋巧一社長は、大量のキュウリを前にこう説明した。記者は2月4日に工場を訪れたが、恵方巻と思われる太巻きやキュウリがちらほらと見受けられた。恵方巻の製造ラインを試験的に稼働させたり、試作品をつくったりする過程で廃棄される恵方巻が節分の約1週間前から工場に運び込まれる。
恵方巻の廃棄量は1年前と比べてどんな変化があったのだろうか。参考となる資料を高橋社長が提供してくれた。資料にはコンビニ向けに弁当や恵方巻を製造している工場から同社に運ばれた廃棄物の量がまとめてあり、2018年1月28日〜2月4日の分と19年1月28日〜2月4日の分が比較できるようになっている。
A社は1万4361キロ(18年)から1万2911キロ(19年)に減少、B社は1万2098キロから1万2212キロに増加、C社は1万7415キロから1万3156キロに減少している。コンビニに限っていえば、恵方巻の廃棄が社会問題化する中、各社は廃棄量を減らそうとしているものとみられる。
なぜ食品廃棄物を焼却しないのか
同社には、1日平均35トンもの食品廃棄物が運び込まれる。“供給元”は、食品スーパーや百貨店などの小売業者とコンビニ向けの弁当などを製造する食品工場だ。現在、180以上の事業所と契約しており、365日休むことなく食品廃棄物をリサイクルしている。取材当日も、リフトカーが食品廃棄物を次々と工場内に運び込んでいた。
なぜ、焼却処分をするのではなく、同社に食品廃棄物の処理を依頼する事業者が存在するのだろうか。理由は大きく2つある。
2001年に施行された食品リサイクル法は、年間100トン以上を排出する事業者に対して、廃棄物の発生を抑えたり、再利用したりするように求めている。目標が達成されないと、罰則の対象になることもある。そこで、食品リサイクル工場に食品廃棄物を持ち込んでいるのだ。
また、事業者が自治体にお金を払って廃棄物を処理してもらうより、食品リサイクル工場に依頼したほうが安上がりになるケースもある。高橋社長によると、事業系一般廃棄物の処理費用は自治体によって異なるが、1キロ当たり35〜50円のところが多い。同社は一般的な価格より安く処理しているため、コストダウンの観点から選ばれることもあるという。
日本フードエコロジーセンターでは食品廃棄物を工場内で処理し、豚の飼料として関東近郊の15戸の養豚農家に供給している。高橋社長に、飼料になるまでの流れを案内してもらった。
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