恵方巻があっという間に豚の飼料へ 食品廃棄とリサイクルの現場を歩く:首都圏の工場を取材(2/5 ページ)
食品廃棄の観点から恵方巻のイベントが批判されている。首都圏のある工場では廃棄された恵方巻が豚の飼料になっていた。どのような仕組みになっているのだろうか。
麺、シュークリームの皮、チーズの塊
まず、飼料の“原料”となる食品廃棄物を見せてもらった。工場内にずらりと並ぶコンテナをのぞき込むと、中華麺が大量に入っていた。隣のコンテナにはクリームが入ってないシュークリームの皮が山のように盛られている。これらは食品工場から運び込まれたものだ。スーパーから持ち込まれたコンテナ内には、恵方巻とパンがぐちゃぐちゃに交じった状態で入っていた。トマトやキャベツといった野菜だけが入ったコンテナもある。飼料の原料はバラエティーに富んでいる。
同社はどのような基準で、廃棄物を受け入れているのだろうか。獣医師の資格を持つ高橋社長は「明らかに腐ったもの、大量の香辛料、卵の殻や魚の骨といったものは豚が食べられないので、受け入れていません。ですが、人間と豚は内臓のつくりがほとんど一緒なので、それ以外のものはほとんど大丈夫です」と説明した。鶏や牛の飼料ではなく、豚の飼料を製造しているのにはこんな理由もあったのだ。
工場内に入って気付いたことがある。それは、“生ごみ臭”がそれほど気にならなかったことだ。明らかに腐ったものを受け入れていないことはもちろん、廃棄物を迅速に飼料にするため、腐敗することがほとんどないのだ。
受け入れる廃棄物をコントロール
大量の廃棄物を見ていて気になったことがあった。ランダムに廃棄物を受け入れていると、飼料の栄養に偏りが出てしまうのではないか? ということだ。特に、この時期は恵方巻が大量に持ち込まれる。高橋社長にこの点を尋ねると、「恵方巻のシーズンは需給バランスを調整しています。当社で全て受け入れられないときは、他の工場を紹介していますね」と説明した。廃棄物をブレンドするにあたっては、ご飯やパンなどの炭水化物が6〜7割になるようにしている。それ以外は、野菜くずや牛乳を混ぜて栄養を調整しているという。また、品質を安定させるために、カルシウムやアミノ酸を配合しているのだとか。
同社がスーパーや食品工場と新規に契約するときには、あらかじめ「ソバやうどんはこのくらい受け入れますが、てんぷらカスはダメです」といったように、廃棄物の種類や供給量を調整している。こういった細かな運営ノウハウをもとにビジネスを展開しているのだ。
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