連載
「産まない女が問題」麻生発言の陰で、増え続ける“未婚シングルマザー”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
結婚せずに母親になった「選択的シングルマザー」が増えている。フランスでは婚外子の権利を保障する取り組みが進んでいるが、日本では未婚というだけで「会社を辞めなければならない」現実にぶち当たる人がいる。“世間のまなざし”は変わるのか。
「選択的シングルマザー」へのまなざしは冷たい
選択的シングルマザーは「Single Mother by Choice=SMC」の和訳で、アメリカの心理療法士ジェーン・マテス氏が今から40年近く前の1981年に使ったのがきっかけで、世界中に広がりました。
「彼女たちは独身でありながら、母親になることを選択した人。心身共に成熟した大人の女性であり、責任感にあふれている。そして、シングルマザーになったことについて、被害者意識をもつのではなく、むしろ力づけられたと思っている人たちである」と、マテス氏は選択的シングルマザーを評します。
「選択的シングルマザーなんて!!」と目を釣り上げている人も多いかもしれませんが、世界では決して珍しい存在ではありません。特に2006年に民法を改正し、婚外子も婚姻関係から生まれた子と同一の権利が得られるようになっているフランスでは、社会的に広く認知され、偏見のまなざしは存在しません。
それでもやはり「選択的夫婦別姓」でさえ反対意見が多い日本ですから、彼女たちに注がれるまなざしは半端なく冷たい。いや、それだけなら「選択的」に未婚を選んだ女性も我慢できるかもしれません。問題は「未婚」というだけで、会社を辞めなくてはならないリアルです。
実際、私がインタビューした43歳の女性もそうでした。
関連記事
- 「いい加減にしてよアグネス」から30年 “子連れ出勤”論争に根付く3歳児神話の呪縛
30年前のアグネス論争がきっかけで生まれた言葉「子連れ出勤」。いまだに政治家が「3歳児神話」を持ち出し、批判されている。まだまだ子連れ出勤には課題がある。難しい問題だが、神話ではなく「ケア」の考え方が必要だ。 - なぜLGBT後進国ではダメなのか 「国つぶれる」発言を覆す“伝説のスピーチ”
「同性婚が認められないのは違憲」として、10組の同性カップルが集団訴訟を起こす。先日、平沢勝栄議員が「国がつぶれる」と発言したことからも分かるように、日本は「LGBT後進国」。“自分と違う人”を尊重できる社会になるのか。そのヒントとなる「伝説のスピーチ」とは…… - 子どもを持つのは国のため? 「3人以上産んで」発言に潜む“幻想”
加藤寛治衆議院議員の「3人以上子どもを産んで」発言。「何が問題なのか」という声も聞こえますが、こうした発言が繰り返される理由を理解しておく必要があります。そこには、戦時中から変わらない「価値観」がはびこっていて……。 - “やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸
消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。 - 「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.