NGT48事件に見る、組織の危機管理上やってはいけないこと:火に油を注ぐ(1/4 ページ)
アイドルグループ「NGT48」の山口真帆さんが襲われた事件はいまだ収束の見通しがつかない。なぜこうした事態になっているのか。そこには危機管理対応のまずさがあったという。
2018年12月8日、新潟を拠点に活動するアイドルグループ「NGT48」のメンバー、山口真帆さんが自宅マンションでファンの男2人に襲われた。
それから1カ月後の19年1月8日には、山口さん自ら事件をネット動画サイトで涙ながらに被害を告発した。翌日にはツイッターで一部のメンバーが山口さんの帰宅情報を犯人に漏らしていた可能性に言及、運営会社の対応への不満と不信を訴えたことで事件は一挙にネットを介してメディアに拡散した。NHKや民放TV局ワイドショーをはじめCNN、TIMEなど海外メディアもトップニュースで報じる状況になった。
さらに1月10日のグループ3周年記念公演では、山口さんは被害者でありながら「お騒がせして申し訳ありませんでした」と謝罪した。運営会社に追い込まれての謝罪だとファンを中心に組織批判が起こり、いまだに事態は収束していない。
また、この一連の事件に関して、新潟県知事が定例会見で県に与えた影響を聞かれ、「ないことを祈りたい。NGT48の存在が(この事件で)世に知られることになったのは事実」と答え、失言だと批判される一幕や、NGT48のCMを降板する企業まで出現したのである。
被害者をコントロールできると思ったのか?
筆者は、組織における危機管理の専門家であるが、今回の騒動は、企業やビジネスパーソンが反面教師にすべきさまざまなポイントがある。
危機管理では初期対応で失敗しないことが何よりも重要である。ここでミスを犯すとリカバリーが困難なのが危機管理のやっかいな点である。
NGT48事件では、山口さんがネットで自ら告発を決意するまでに運営会社がやるべきことをやっていれば、本人も納得して告発しなかった可能性はある。少なくとも山口さんの納得のいく形での発表があり得たはずだ。運営会社が発表したのは山口さんの告発後で、後手に回ってしまっている。
事件で最もショックを受け、不安な気持ちを抱いているのは被害者である。問題が発生した時に最優先で対処すべき相手は当然、被害者なのだ。どのステークホルダーを優先して対応するかの判断は危機管理の重要な第一歩である。
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