NGT48事件に見る、組織の危機管理上やってはいけないこと:火に油を注ぐ(2/4 ページ)
アイドルグループ「NGT48」の山口真帆さんが襲われた事件はいまだ収束の見通しがつかない。なぜこうした事態になっているのか。そこには危機管理対応のまずさがあったという。
第一段階で運営会社が山口さんに寄り添って、満足できる対策(具体的で安心できる安全対策と再発防止策)を示せなかったことが最初のつまずきである。優先して対応すべき相手は誰か、適切な危機対応を迅速に実行できるかが鍵と言える。
旧来の日本の芸能界の常識、例えば、運営会社にタレントはたてつかない、コントロールが効くといったことは通用しなくなっているのではないだろうか。SNSとスマホが当り前の現代は、いつでも、どこでも、誰もが自由に情報を発信し、伝達し、拡散することが可能な“誰でもメディア時代”だ。こうした状況下、日本の芸能界も当事者の意思に反して情報をコントロールし、メディアを主導することが困難になってきている。
逆に、SNSを自由自在に使いこなし、ファンとのエンゲージメントを築くことがタレントの不可欠なスキルになっているのが今の時代であるのだ。運営会社はまさか、山口さんがSNSで自ら事件を告発する動きに出るとは考えてもいなかったのではないか。
18年に大きな話題となった「日大アメフト問題」と同じ構図がここにある。相手チームの選手に危険タックルを実行した自分の責任は認めつつ、監督とコーチの指示で行ったと、ただ一人で記者会見を開いて訴えた20歳の日大選手のことを考えれば理解できるはずだ。しかも、今回のNGT48の事件に関して、山口さんは純粋に被害者である。日大も運営会社も、まさか組織の絶対的コントロール下にある人物が反乱を起こすとは思ってもいなかったのだろう。
リスクをリスクとして認識しなければ当然、危機に対応(リスクマネジメント)し、実行することはできない。必然的に危機管理は失敗することになる。
この事件で危機管理が失敗した原因の一つが、初期対応(リスク認識と迅速性の欠如)である。
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